2019年5月24日金曜日

20180524晩年の記(その七)



 その男は一週間ほど前の真夜中、トイレに起きた後思い立ったようにネット上に治験についての情報を探していた。希少がんに関する治験に応募したらその男は「治験の対象外」であるとされた。それでもあきらめず探していたら「オンコロ」というがん情報サイトに出会った。「オンコロ」は国立がん研究センター中央病院と関係があるようである。早速治験広告に応募したが、そのことをすっかり忘れていた。

 その男がK大学病院で口腔ケアを受けるため同病院に行っているときその男のスマホにその男の自宅の電話にオンコロから電話が入っているという通知があった。帰宅後留守番電話を再生し、オンコロに電話を入れた。Oという女性の方が担当で、その男が治験を受けることができるかどうかその方からいろいろ質問があった。その結果その男はオプジーボなどの治験を受けることが出来そうに思えた。その男のところにOさんからメールで応募資料が送られてきた。その資料は患者の主治医宛のものである。その男は早速その資料をプリントアウトし、主治医に自分がその治験に該当するかどうかの判断を仰ぐため主治医に依頼する手紙を添えて郵送した。

 その男が受けた治療は放射線治療とゾメタ投与という化学治療である。ゾメタは大体月一回投与される。ゾメタ投与は4日前に受けていて、その前に血液検査・レントゲン検査・主治医による診断があった。その時の診断ではその男のがんは一か月前に比べて進行していない、というものであった。骨に到達したがん細胞は破骨細胞を働かせて自分が増殖するスペースを確保する。ゾメタという薬はその破骨細胞の働きを抑えて骨を守り、病巣の進行を抑制するものであり、高カルシウム血症の治療にも用いられる。しかしゾメタという薬にはあごの骨の壊死・骨隨炎を引き起こすという副作用がある。抜歯など歯の治療を受けた患者や歯の治療中の患者は注意が必要である。幸いその男は一本も抜けていず、虫歯など悪い箇所は全くないのでその心配はない。それでもゾメタ投与を受けるので口腔ケアは必要である。

 ゾメタ投与によって血管肉腫という悪性の強いがん細胞は骨へ転移しにくいであろうが、その男の腹部大動脈瘤の中ではその血管肉腫が生産され続けている。今のところそのがんはその男の上半身の骨や内臓などに転移していないが、行き場を失ったがん細胞は血流に乗ってその男の全身を巡ることになるだろう。しかし、今のところその男のNK細胞がしっかり戦っていて血管肉腫を抑え込んでいるようである。

 その男は詩吟の仲間であるSから「ハイゲンキ」という玄米酵母を買い入れている。その男は霊芝入りのハイゲンキとスピルリナ入りのハイゲンキを一袋ずつ、一日3回以上食べるようにしている。玄米を常食にし、甘いものは食べず、腸内環境を良くするような食事をしている。その男の妻である誰某はその男の全快を願って日夜その男に献身的に尽くしてくれている。その男はそのような妻のため、必ず「余命一年」のがんを克服しようと努力を重ねている。