2018年10月11日木曜日

20181011終章(「日本民族の未来」への私の最後の思い)―― 『古事記』を読む ――



先日、北海道大学がプレスリリーズした「群れをなすメリットがコハナバチの社会進化を導く」という研究報告は注目に値する。その要点は、“働きバチが子を産まず母の子を育てる「真社会性」の進化に、血縁利益はほぼ貢献しないことを解明。・・・親という血縁者を通してワーカー(働き蜂ハチ)内にある利他行動の遺伝子が次世代に伝わる・・・社会性の進化の理由として、群形成のメリットが大部分を占めていることが示された・・・他の真社会性生物でも同様の測定を行い、社会性の進化に対して、群効果と血縁効果の相対的重要性を評価することで、ヒトを含め、社会性(=協力)が進化する理由への一般的回答が得られることが期待される。”である。

 このことは出来るだけ多くの人種との間での混血が進んでいる社会は自然に「利他行動」が発現されるに違いない。日本人は多様性に富み、一人一人の日本人は様々な思想・信条を持っているが、「群れ」に忠実である。日本の場合、徳川幕府消滅前後以降および前の大戦に敗戦以降の著しい社会進化は、日本人の生来の「利他行動」によるものではないだろうか?日本人は多くの人種が混血している単一民族国家である。アメリカ・中国・ロシア・EUも多くの人種が混在し、その内部で混血が進んでいる。ブラジル等中南米諸国も同様である。これらの国々・地域内では「群れ」行動を通じて社会性が一層進化してゆくことであろう。

国立遺伝学研究所などの研究チームは10日、旧石器時代から江戸時代までの100人以上のゲノム(全遺伝情報)を解析するプロジェクトチームを始めると発表した。・・・プロジェクトは今年度から5年間で行う。・・・国立遺伝学研究所の斎藤成也教授(人類進化学)は「日本列島に住み始めた人々の起源や文化に一歩でも迫りたい」と意気込む (今年912日付読売新聞) 日本人は何処から来て何処に行くのか。一筋の光が見えて来ることだろう。

 ヒトを含む全ての生物は生存と自己保存を目指す。日本人の集団も例外ではない。むしろ日本人は意識的にそれを目指すべきである。さもないと日本人も何かの環境の変化により、ヒトという生物として生き残ることが困難になる。戦後の日本人は戦勝国アメリカの武力に依存しすぎていて「(日本人として)生き残る」という意欲に欠けていた。幕末、日本人は生き残るために何をしたか?日本が西欧列強と肩を並べるほど力を付けた後、日本人は国の為、アジアの解放のため戦ったではないか? 朝鮮を近代化したではないか?

 色々な経験を経て日本民族は急速に進化し続けている。その源は何だろうか?考えられることは;①利他行動、②国際法の順守、④礼節をわきまえること、③理性的行動(歴史的な事実を歪曲しない。感情に走らない。他国・他の国民に対して非礼な言動をしない。)、⑤創意・工夫の精神、⑥辛坊・忍耐の精神、⑦切磋・琢磨の精神、⑧天皇を大切に守って来た国民性、⑨日本人皆同胞の意識、などが挙げられる。
 
法律の改正により今後日本に永住する人が増えるであろう。一方、法律により永住権を得ている特別永住者の数は日本人との結婚等により徐々に減ってゆくことであろう。それらの永住者・特別永住者は数世代後には皆日本人になってゆくことだろう。混血は2のn乗(nは世代数)で広がって行くだろうから、将来皆血が混じり合い同じ日本人になる。日本国籍を取得した人は皆日本民族の一員となり、古来の日本の伝統・文化を大切に思うようになるだろう。必ずそうあるべきであり、私はそのように期待している。

 東アジアの情勢は安定の方向に向くのか?或は150年前に似た状況に戻るのか?「日出る国ニッポン」「東洋の光の国ニッポン」は前の大戦で言語に絶する悲惨な目に遭ったが、先人たちの意識(=量子のはたらき=魂)が我々を見守って下さったから見事に蘇ったのだ。全ての日本人よ、「祖霊」の存在を意識し、「祖霊」に感謝しよう!

 現代は余りにも情報の量が多すぎて、『古事記』・『万葉集』など大事な古典に対する関心が低いように思う。『古事記』と『万葉集』は、全ての日本人の魂の拠り所となる物である。少なくともこの2冊の古典だけは、学校で家庭で職場で事あるごとに話題にされるようになることを願う。これを以って“『古事記』読む”シリーズを締めくくることとする。(終り)


2018年10月4日木曜日

20181002日本人の特性 ―― 『古事記』を読む ――


 日本人の特性について考える。日本のある企業が外国である事業を請け負って完成させ、納入したとする。その後その納入物に大きな問題が起きたとする。この場合もし日本人なら起きてしまった問題の解決のため、その企業・日本政府と共に何かしようと考えるだろう。其処には日本人が共有している「恥の文化」と「同胞意識」がある。

 かつて日本は、アメリカと戦争をしているとき、軍部は「鬼畜米英」というプロパガンダ用語を用いて国民を鼓舞していた。その当時、国民はアメリカ空軍による無差別絨毯爆撃で家族や近所の人たちを失っていた。そのプロパガンダはそのような悲惨で異常な状況の中で国民の気持を外に反らすため用いられていたと考えられる。もし当時、SNSが発達していたらどうであっただろうか?日本人は反米感情をあらわにし、アメリカ人を獣や家畜扱いにしてののしっていただろうか?私は決してそうは思わない。

 私の見解では、日本人は自らを獣や家畜同然のレベルまで下げてものを言うようなことは決してしないだろう。古来、日本人には「恥の文化」が根付いている。日本人は自分が死んだあと、辱めを受けることを決して望まない。其処には、日本人には「前世・現世・来世」という「三世輪廻の宗教観」が根付いている。古代インドで生まれ、古代中国で継承されたたが衰退し、日本で発展した仏教思想が日本人の精神を形成している。更に日本では、古代の朝廷による政治を引き継いで、中世から近代にかけての武家による政治が行われた。その間一貫して古代中国の思想が学ばれていた。その中には陽明学と言う、ある意味「実用の学」も含まれていた。こういうことが日本人の特性を形成していると考えられる。

 津田左右吉著『古事記及び日本書紀の研究』(毎日ワンズ)に “いろいろの事情にも助けられて、皇室は皇室として長く続いてきたのであるが、これだけ長く続いてくると、その続いてきた事実が皇室の本質として見られ、・・・皇室を未来にも長く続けさせようという欲求が生ずる。・・・長く続くようにしなければならぬ、ということが道徳的義務として感ぜられるようになる。・・・神代の物語は皇室の由来を物語の形で説こうとするものであって、その中心観念は、皇室の御祖先を宗教的意義を有する太陽として日の神とし、皇位(天つ日嗣)をそれから伝えられたものとするところにあるが、それは政治的君主としての天皇の地位に宗教的性質があるという考えと、皇位の永久という観念とが、含まれている。とある。皇室は、全ての日本人の実家のようなものである。心の拠り所である。日本人が高い品性を保ち得るのは正にこの事実によるものである。

 その背景には、日本人の先祖が約16000年前から約3000年前までの13000年間も続いた縄文人であること、そして約3000年前以降、大陸からの渡って来た人々と縄文人が混血して原日本人になったことが十分考えられる。四囲海に囲まれ、深い森林のなかで狩猟・採集の平和な暮らしをしてきた縄文人の精神文化を水平軸の文化とすれば、闘争を経験した稲作・漁労の民である渡来人の精神文化は垂直軸の文化と考えることが出来る。原日本人の精神文化はその両軸のベクトルの合成であると考えることができる。其処には自ずと「恥の文化」を生む秩序と、広大な大自然の中で協力し合う「同胞意識」と、大自然と共に生きてきて培った「前世・現世・来世の三世輪廻の宗教観」を生む素地があったのである。

吉田敦彦著『日本神話の源流』(講談社現代新書)に“日本神話が世界の諸民族の神話と比較されるようになって・・・わが国の古典神話が、ポリネシヤやミクロネシア、インドネシアなど、南太平洋の海上に浮かぶ大小の島々の原住民の・・・神話と、きわめてよく似た話を数多く含むという事実であった”とある。日本人と東南アジア人の間の親近感の源は其処にある。アメリカ軍太平洋艦隊司令長官ニミッツ元帥が称賛したペリリュー島守備隊の日本軍人のこと、戦いが終わり帰島直後の島民が無数の日本軍人の屍を見て何を感じ、何をし、現在パラオ・ペリリューはどのようにあるかということを知るには、この神話の類似性のことを頭に入れるべきである。

『古事記』の「上つ巻」と『日本書紀』の巻第一神代上及び同下の神話は、スンダランドから日本に渡って来た「南回り縄文人」の先祖が語り継いだ話であるに違いない。その話は南太平洋の島々の原住民の先祖に語り継がれたものと同じ類に違いない。『古事記』は日本人向けに書かれ、『日本書紀』は中国人と日本人向け書かれた歴史書である(竹田恒泰著『古事記完全講義』)

その『古事記』に日本独自の神話が書かれている。それは皇室の氏神・日本国民の総氏神であられる天照大神が「天の岩屋戸」にお隠れに成られたときの話である。
①天兒屋命(あめのこやねのみこと)は祝福の祝詞を申し、腕力の強い神様・天手力男神(あめのたちからをのかみ)が岩屋戸の脇に隠れて立った。
②天宇受賣命(あめのうずめのみこと)は天の香山のサガリゴケを手次(たすき)に繋(か)けて、ツルマサキを髪飾りにして、天の香山の小竹葉(ささば)を手に持ち加減に結び束ねて、天の岩屋戸に空っぽの入れ物をうつ伏せにして蹈(ふ)み轟(とどろ)こし、神懸かりして、胸乳をかき出(いで)裳緒(もひも)を陰(ほと)に押し垂れた。
 (アメノウズメノミコトは天の岩屋戸の前でとんとんと足を踏み鳴らして恍惚状態になり、素っ裸になって、手にした一枚の布を自分の陰部に当て、ストリップショーをした。)
③高天の原が動(とよ)んだ。
④八百萬の神は皆大笑いした。
⑤天照大神は怪しいと思って、天の岩屋戸を少し開いてみた。(後略)    (続く)