2018年10月4日木曜日

20181002日本人の特性 ―― 『古事記』を読む ――


 日本人の特性について考える。日本のある企業が外国である事業を請け負って完成させ、納入したとする。その後その納入物に大きな問題が起きたとする。この場合もし日本人なら起きてしまった問題の解決のため、その企業・日本政府と共に何かしようと考えるだろう。其処には日本人が共有している「恥の文化」と「同胞意識」がある。

 かつて日本は、アメリカと戦争をしているとき、軍部は「鬼畜米英」というプロパガンダ用語を用いて国民を鼓舞していた。その当時、国民はアメリカ空軍による無差別絨毯爆撃で家族や近所の人たちを失っていた。そのプロパガンダはそのような悲惨で異常な状況の中で国民の気持を外に反らすため用いられていたと考えられる。もし当時、SNSが発達していたらどうであっただろうか?日本人は反米感情をあらわにし、アメリカ人を獣や家畜扱いにしてののしっていただろうか?私は決してそうは思わない。

 私の見解では、日本人は自らを獣や家畜同然のレベルまで下げてものを言うようなことは決してしないだろう。古来、日本人には「恥の文化」が根付いている。日本人は自分が死んだあと、辱めを受けることを決して望まない。其処には、日本人には「前世・現世・来世」という「三世輪廻の宗教観」が根付いている。古代インドで生まれ、古代中国で継承されたたが衰退し、日本で発展した仏教思想が日本人の精神を形成している。更に日本では、古代の朝廷による政治を引き継いで、中世から近代にかけての武家による政治が行われた。その間一貫して古代中国の思想が学ばれていた。その中には陽明学と言う、ある意味「実用の学」も含まれていた。こういうことが日本人の特性を形成していると考えられる。

 津田左右吉著『古事記及び日本書紀の研究』(毎日ワンズ)に “いろいろの事情にも助けられて、皇室は皇室として長く続いてきたのであるが、これだけ長く続いてくると、その続いてきた事実が皇室の本質として見られ、・・・皇室を未来にも長く続けさせようという欲求が生ずる。・・・長く続くようにしなければならぬ、ということが道徳的義務として感ぜられるようになる。・・・神代の物語は皇室の由来を物語の形で説こうとするものであって、その中心観念は、皇室の御祖先を宗教的意義を有する太陽として日の神とし、皇位(天つ日嗣)をそれから伝えられたものとするところにあるが、それは政治的君主としての天皇の地位に宗教的性質があるという考えと、皇位の永久という観念とが、含まれている。とある。皇室は、全ての日本人の実家のようなものである。心の拠り所である。日本人が高い品性を保ち得るのは正にこの事実によるものである。

 その背景には、日本人の先祖が約16000年前から約3000年前までの13000年間も続いた縄文人であること、そして約3000年前以降、大陸からの渡って来た人々と縄文人が混血して原日本人になったことが十分考えられる。四囲海に囲まれ、深い森林のなかで狩猟・採集の平和な暮らしをしてきた縄文人の精神文化を水平軸の文化とすれば、闘争を経験した稲作・漁労の民である渡来人の精神文化は垂直軸の文化と考えることが出来る。原日本人の精神文化はその両軸のベクトルの合成であると考えることができる。其処には自ずと「恥の文化」を生む秩序と、広大な大自然の中で協力し合う「同胞意識」と、大自然と共に生きてきて培った「前世・現世・来世の三世輪廻の宗教観」を生む素地があったのである。

吉田敦彦著『日本神話の源流』(講談社現代新書)に“日本神話が世界の諸民族の神話と比較されるようになって・・・わが国の古典神話が、ポリネシヤやミクロネシア、インドネシアなど、南太平洋の海上に浮かぶ大小の島々の原住民の・・・神話と、きわめてよく似た話を数多く含むという事実であった”とある。日本人と東南アジア人の間の親近感の源は其処にある。アメリカ軍太平洋艦隊司令長官ニミッツ元帥が称賛したペリリュー島守備隊の日本軍人のこと、戦いが終わり帰島直後の島民が無数の日本軍人の屍を見て何を感じ、何をし、現在パラオ・ペリリューはどのようにあるかということを知るには、この神話の類似性のことを頭に入れるべきである。

『古事記』の「上つ巻」と『日本書紀』の巻第一神代上及び同下の神話は、スンダランドから日本に渡って来た「南回り縄文人」の先祖が語り継いだ話であるに違いない。その話は南太平洋の島々の原住民の先祖に語り継がれたものと同じ類に違いない。『古事記』は日本人向けに書かれ、『日本書紀』は中国人と日本人向け書かれた歴史書である(竹田恒泰著『古事記完全講義』)

その『古事記』に日本独自の神話が書かれている。それは皇室の氏神・日本国民の総氏神であられる天照大神が「天の岩屋戸」にお隠れに成られたときの話である。
①天兒屋命(あめのこやねのみこと)は祝福の祝詞を申し、腕力の強い神様・天手力男神(あめのたちからをのかみ)が岩屋戸の脇に隠れて立った。
②天宇受賣命(あめのうずめのみこと)は天の香山のサガリゴケを手次(たすき)に繋(か)けて、ツルマサキを髪飾りにして、天の香山の小竹葉(ささば)を手に持ち加減に結び束ねて、天の岩屋戸に空っぽの入れ物をうつ伏せにして蹈(ふ)み轟(とどろ)こし、神懸かりして、胸乳をかき出(いで)裳緒(もひも)を陰(ほと)に押し垂れた。
 (アメノウズメノミコトは天の岩屋戸の前でとんとんと足を踏み鳴らして恍惚状態になり、素っ裸になって、手にした一枚の布を自分の陰部に当て、ストリップショーをした。)
③高天の原が動(とよ)んだ。
④八百萬の神は皆大笑いした。
⑤天照大神は怪しいと思って、天の岩屋戸を少し開いてみた。(後略)    (続く)   
    

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