2018年9月6日木曜日

20180906原日本人の形成 ―― 『古事記』を読む ――



 安田喜憲著『古代日本のルーツ 長江文明の謎』に畑作牧畜民が作り上げた文明は、森を破壊し、闘争的で、・・・森から生まれた稲作漁労文明は、自然の再生と循環を重んじ、・・・長江文明をつくりあげた稲作漁労民は、畑作牧畜民のように争いを好まなかった。・・・中国の長江文明と日本の縄文文明の間に交流はあったのか。・・・三内丸山遺跡や縄文時代前期の福井県鳥浜貝塚から発見された鹿角斧は、長江流域の河姆渡遺跡から見つかったものと驚くほど似ている。・・・江漢平原こそ長江文明の発祥地であり、雲南省や貴州省、江西省などの山間部にひっそりと暮らす苗族は、江漢平原で誕生した長江文明を受け継ぐ者たちだったのである。・・・馬に乗り青銅の武器を持った民たちにとって、長江の民の征服は容易だったであろう。・・・とくに約3000年前の寒冷乾燥化は厳しいもので、北方の民は大挙して長江流域に押し寄せた。・・・多くの人々は、北方からやって来た人と一緒に暮らしただろう。・・・長江流域の民が向かったのは、中国の山奥ばかりではない。すでに指摘したように、海を渡り、台湾にも行っている。さらには日本列島に渡り、日本の弥生文化の成立にも大きな影響を与えている。・・・苗族の伝説には、彼らの哀しみを伝えているものがある。彼らの祖先が黄帝の子孫と戦ったという話である。黄帝というのは、漢民族による中国の先祖とされる人物である。”とある。

 遠くスンダランドに発し、黒潮に乗って日本列島に辿りついた縄文人の祖先(黒潮の民)は丸ノミ石斧製作・造船・航海・漁労の技術を持っていた。樺太や・朝鮮半島経由で日本列島にやって来た縄文人の祖先と黒潮の民は混じり合い、黒潮の民の丸ノミ石斧の技術は磨製石斧製造に応用され、日本島全体に拡散した。これらの人々(縄文人)のルーツは皆同じで、4万年〜5万年前カザフスタン南部を出発し移動してきた人たちであり、寒冷地に適応して進化した漢民族などの祖先より約1万年前分岐した初期の人たちであった。

 約16000年前から約3000年前までの約13000年間続いた縄文時代に、長江河口から漁に出た稲作漁労民が嵐に遭って沖縄・九州南部に漂着したことが何度かあったと考えられている。事実、現在でも長江河口付近の漁民はそういうことを語っている。黒潮の民と彼ら漂流漁民とは、造船・航海・漁労と言う面で何か共通するものがあったに違いない。

海人族の祖先神は綿津見神(ワタツミノカミ)である。海人族は元々黒潮の民であった。長江河口からの漂流漁民の中から黒潮の民を統率する者が現れた。それが安曇氏の先祖である。新人物文庫『古代豪族の謎』では、『日本書紀』応神天皇三年十一月条を引用して、“安曇氏は応神系列以前から列島全体の海部を支配した存在ではなく、いずれかの時点で各地に分布していた海人集団を統括するようになった”としている。

3000年前、長江中流域の稲作漁労民が畑作牧畜民による圧迫を逃れて長江河口から日本に渡って来た。彼らは元々水稲稲作技術を持っていたが、その上畑作牧畜民の文明を身につけていたに違いない。青銅製の剣も所持していたに違いない。彼らは元々縄文人と同じで闘争を好まぬ温和な人たちであったので、縄文人たちと殺し合うことは無かったが、稲作技術を持っていて縄文人たちより良い暮らしをすることができたと考えられる。そしてお互い婚姻関係をもって混血し、「倭人」と呼ばれる原日本人が誕生したのである。

『古事記』に出ている大山津見神(おおやまつみのかみ)はその土地の原日本人の集落の長だったのであろう。その二女は縄文人の血を濃く引いて容貌は彫りが深く、眼はパッチリとし、二重瞼でえくぼが可愛い乙女であったと想像される。それに比べ長女の方は長江中流域からボートピープルになってやって来た人々の血を濃く引いていて、鼻は低くのっぺらぼうの顔立ちで、決して美人ではなかったと想像される。

①『古事記』には、ニニギノミコト(天津日高日子番能邇邇藝命 あまつひこひこほのににぎのみこと)が笠沙(かささ)の御前(みさき)で麗(うるわ)しき美人(おとめ)に遇(あ)って、「あなたは誰か」と問うたら、その美人は「大山津見神(おおやまつみのかみ)の女(むすめ)で、コノハナノサクヤヒメ(木花佐久夜毘賣)です」と答えた。
②ニニギノミコトは「わしはそなたと結婚したいと思うがどうじゃ」と仰った。
③コノハナサクヤヒメは「私独りじゃ決められないので父に相談しますね」と答えた。
④コノハナサクヤヒメの父・大山津神は大喜びで、姉の石長比賣を副えて、色々な贈物を持たせて姉妹をニニギノミコトのところに行かせた。
⑤ところがニニギノミコトは姉の方は美人でなかったので送り返し、妹のコノハナサクヤヒメとその夜セックス(一宿婚 ひとよまぐはひ)した。


                                   (続く)

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