2016年4月12日火曜日

20160412「仏教」をキーワードに、思いつくまま綴る(17)―― 沖縄の基地問題 


 先ず、副標題について「iRONNA」から“”で引用しつつコメントする。
 “翁長雄志沖縄県知事は、921日午後5時すぎ(日本時間922日午前0時すぎ)、ついにジュネーブで開催されている国連人権理事会において演説を行った。
翁長知事の主張を更に要約すると次の3点になる。
(1)沖縄県民は日米両政府から米軍基地を押し付けられて差別を受けている
(2)その差別は(日本の先住民族である)沖縄県民の自決権(自己決定権)を侵害している
(3)日本政府は沖縄に対しては民主主義も人権も平等も与えていない”

この要約のかっこ( )内の「日本の先住民族である」という言葉は、翁長知事国連人権理事会演の全文の中には、一言もない。これは、「iRONNA」筆者が下記のことを念頭に、強調したものであろう。

2008年時点には既に国連は沖縄県民を日本人ではなく日本の先住民だと認識し、日本政府に勧告を出していたということである。20081030日の自由権規約委員会 94回会期では、次のように日本政府に公式見解を提出した。
 32.委員会は、締約国が正式にアイヌの人々及び琉球・沖縄の人々を特別な権利と保護を付与される先住民族と公式に認めていないことに懸念を持って留意する。(27)

 国際社会においては、日本国内に「先住民族」問題があると認識されているようである。しかしこれは間違っている。日本には「先住民族」問題はない。南北アメリカ大陸の原住民は、その大陸に後から渡って来て彼らを武力で征服したヨーロッパ人とは明らかに違う人種である。それもアフリカから旅立った人類がヨーロッパ人よりも早い段階に分岐し、アメリカ大陸まで移動していった人々の子孫である。そこでは明らかに「先住民族」問題はある。「日本の先住民族」問題は、日本を貶めたい勢力の陰謀により惹起されていることである。

 アイヌの人々及び琉球・沖縄の人々の先祖は我々日本人に共通の縄文人である。縄文人は東アジア人よりも早い段階で、北アジアの何処かで分岐し、日本列島に渡って来た。彼らは日本列島だけにしか存在していない。福島県の三貫地貝塚で収集された、今から3000年前の縄文遺跡から採集された100体以上の縄文人の人骨の中で、核DNAを採集しやすいと見込まれた男女成人各一体の奥歯の歯根から核DNAの塩基配列が明らかにされた。その結果、日本人は東アジ人ア・東南アジ人とは全くかけ離れていることが明らかになった。

 ミトコンドリアDNAのハプログループで見るとアイヌの人々及び琉球・沖縄の人々の先祖は共通であることがわかっている。アメリカ大陸のインディアンやインディオと同じような感覚で、アイヌの人々及び琉球・沖縄の人々の先祖を「先住民」とするのは正しくない。

 問題は文化的なものである。九州以南の諸島には推古天皇のころから朝廷に服属するように働きかけがあり、天皇から位階が授けられている。元明天皇の御世、西暦715年の旧暦125日には、朝廷の役人(少初位下・太朝臣遠建治ら)が奄美・石垣・久米などの島民52人を率いて南島から帰っている。これらの史実は日本の歴史書『続日本紀』に書かれている。

沖縄の人々の先祖は薩摩藩による支配の下、琉球王国としてシナ(清王朝)に朝貢していた。これは徳川幕府により容認されているものであった。明治政府になって廃藩置県政策により琉球王国は琉球藩となり、沖縄県となった。

これらの事実から、沖縄の人々の先祖は「国連自由権規約人権委員会」が決めつけているような「先住民族」では絶対ない。この問題の根底には、沖縄の人々がアメリカ軍の基地問題について本土の人びと以上に過重な負担を一方的に強いられている、という不満があることにある。本土の人びとは、沖縄の人々の気持ちの10分の1も共有していないであろう。沖縄の人びとは、日本の安全と平和と繁栄のため、自分たちだけが過重な負担を強いられていると感じている。本土の人たちは沖縄の歴史をよく知らない。このような文化的な背景が沖縄の基地問題を複雑にしているのである。

日本の左翼の人びとは、このような考古学的・遺伝学的・歴史的真実に目を背け、自分たちの自己満足・利益だけのため日本の国益を損なう活動に情熱を燃やしている。日本の政府も、もっと積極的に国民への啓発活動を行うべきである。特に、本土に住む人々に、沖縄の人々の気持ちを確かに共有できるような啓発活動が必要である。本土の人びとが、「沖縄の基地負担の軽減のため、沖縄にはわれわれの血税から莫大な資金が投入されている。沖縄の人びとにはそれで我慢してもらいたい」というのでは、あまりにも身勝手すぎる。

日本政府は国連においてもさらに積極的に、「日本に先住民問題がある」という誤解を解くように努力すべきである。そのためには、政府内に特別な組織を立ち上げて、そのようなことを含む、日本に対する思想戦・宣伝戦に圧倒的に勝つようにすべきである。

仏教では「因縁」が説かれている。「因縁」の根底には無知から生じる「煩悩」がある。沖縄の人びとの煩悩を増幅しているのは本土の人びとの煩悩である。お互い仏教の「知恵」を出し合って、基地問題に関わる煩悩を無くすようにできないものだろうか?