2009年6月11日木曜日


スロージョギング(20090611

 このところ男は多少不安な気持ちでいる。というのは男の女房が体調不良を訴えているからである。ときたま胸が苦しくなって、そんなとき大きく深呼吸すると楽になる、ひょっとすると狭心症の前兆ではないかしら、という。

 女房は男が医者嫌いでなかなか医者にかからないことを非難し、自分が何か健康上のことで心配になったときはすぐ医者にかかると宣言している。家のすぐ近くに内科のクリニックがあり男はそこの先生と懇意にしているが、女房はその先生に診てもらった。そして先生から様子見のため狭心症を治し、血圧を下げる薬と心臓のあたりに貼るものを1週間分処方された。

 その先生は男の息子と同じ年で、開業したばかりのその小さなクリニックを看護師の資格を持つ奥さんと二人で切り盛りしている。平日は近所に住む中年の女性が看護師として勤務しているが、土曜日は奥さんと二人だけで営業している。

 女房がその先生に診てもらったとき、先生は「大したことはないですよ。ストレスで自律神経がすこし乱れたのでしょう」と言ったという。奥さんの方はなにか気がかりらしく、夫である先生に何か言っていたらしい。そのことが女房にとって一つの不安原因でもある。

 男はインターネットで狭心症のことをいろいろ調べた。その結果、狭心症は患者の問診がまず重要で、精密検査が必要と判断される場合は入院しなければならないことが判った。男の判断でも、その先生と同様、女房は狭心症の前兆ではなさそうである。とりあえず食事や運動に気をつけて、血圧やコレステロールをコントロールし、もしなにかストレスがあるとすればそれを取り除くようにして様子を見ることが必要であると考えた。

 女房は放送大学の専攻を二つも卒業していて、引き続きその大学に籍をおき、看護師がスキルアップのために勉強するような薬学関係の難しい勉強をしている。そのため結構いろいろなことを知っている。男は女房があまりいろいろ詳しいことを知りすぎると、かえって不安が増すのではないかといぶかっている。

 たまたまNHKテレビの「ためしてがってん」番組を二人でみた。その番組で「スロージョギング」の効用について紹介されていた。番組が終わるや否や男と女房は早速意気投合して二人で夜のスロージョギングに出た。30分ほど近くの川の土手を一周するコースをスロージョギングしたが、それをやってみて男も女房もそれが如何に素晴らしいものであるかを実感した。先ずジョギングがすこぶる楽にできて少しも疲れない。それなのに二人とも足の、特に5本の指全体がじゅわっと暖かく汗ばんできた。気温はさほど高くもなかったのに、二人とも結構汗ばんだ。そして何よりも川面から吹き上げてくる涼風を心地よく感じながら楽しい会話が続いた。番組の話によると、そのようなジョギングを続けると前頭葉あたりが大きくなり、判断力や注意力も上がってきて夫婦円満になるということである。ジョギングしながら女房は「とっても気持がいいわねえ」という。男も「そうだね。このようなスロージョギングを続ければお前の狭心症の心配もなくなるよ。」と応える。

 女房は男が買ってきた血圧計で毎朝毎晩血圧と心拍数を測り、データを記録している。男は人間の体は頭を使って正しい知識でコントロールしさえすれば、健康は維持することができると確信している。男は明日も夜二人でスロージョギングをやろうと張り切っている。