2010年7月16日金曜日

ブッダ『感興のことば』を学ぶ(118) (20100716)

男も女房もそのニュースには胸張り裂ける思いである。5歳のその女の子が可哀そうで可哀そうでならない。しかしそのニュースに接した非常に多くの人々は「またか」と思い、可哀そうには思うが関心度は低いに違いない。否、今の世の中がそのような情の薄い世の中になってしまっているのだと思う。

そのニュースとは、福岡県の久留米市で母子家庭の34歳の母親が5歳になる自分の子供・女の子を折檻し、遂には首を絞めて殺してしまった、しかもその折檻は電気洗濯機にその女の子を入れ、蓋を閉め、スイッチを入れて回したことが何度かあったほど残酷なものであった。世に鬼畜以下のような母親がいて度々ニュースになっているが、この母親も同じである。社会学上大きなテーマとすべき問題である。

イギリス、ロンドン大学のカスピ博士たちは、MAMO(モノアミノ酸という神経伝達物質を酸化して、機能させなくなる酵素)の遺伝子のはたらきが高い人と低い人で、虐待経験によって犯罪などの反社会的行動を引き起こすようになる程度が異なることを示した。

この遺伝子のはたらきの低い人では虐待経験が多い場合反社会的行動を起こしやすいが、そのはたらきの高い人にはそのような影響はほとんどない。遺伝的に環境に敏感な人が特に虐待の影響を受けて反社会的行動に走ってしまう傾向がある。つまり、遺伝的要素より本人の環境による影響が大きいと言うのである。(参考:『Newton別冊「知りたい!遺伝子のしくみ」』)

カスピ博士らの考え方に基づけば、件の母親は家庭を守ってくれる主人も居ず、自暴自棄になってしまうような環境にいたためそのような残虐な行動をしたということであろう。しかし、男は反論する。確かに環境の影響は大きいことは間違いないが、それが問題の原因のすべてではないのである。そのような環境に件の母親がいるという原因は、その母親の親、親族、その他の関係者との間の‘因縁’によることが大きいと男は思う。カスピ博士らは仏教の知識がない人たちであると思うから、‘因縁’ということを知らないと思う。

この‘因縁’は、件の母親が自らの問題を最善の方法で解決する能力を持っていなかったという根本原因である。その女の親から受けた遺伝子、親からうけた精神的なもの、周囲の者との関係など様々な要素が原因となって、‘因縁’となっているのである。

この‘因縁’を断ち切るためには自らのあらゆる執着を捨て去ることができるよう、ブッダにすがるしかない。ブッダに帰依しようとしている人々は自分の周囲にもしそのような女がいる場合はその女に声をかけ、その女の苦悩をすこしでも和らげてやる努力をしなければならない。そのようにすることはブッダに帰依しようとしている人々自身を救う道でもある。かく言う男も女房も例外ではない。もしもしそのような女がいれば、男も女房も必ずなにかの声をかけている。特に男はそういう‘おせっかい’をしたがる人間である。

27 すでにこの世において、自分の苦しみの滅びるのを明らかに知っていて、情欲を離れ、とらわれることの無い人、かれをわれは(バラモン)という。

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