2012年2月16日木曜日


橋下氏の「船中八策」について(20120216)

 大阪維新の会代表の橋下徹大阪市長は、坂本龍馬が長崎から京都に向かう船中に国家構想・幕政返上・議会開設・憲法制定など八か条の書を起草したことにちなんで、「船中八策」を発表した。このことについて賛否両論がある。橋下氏を快く思わない人たちはこの八策に対して感情的な反発をしている人たちもいる。

 人が問題を「発見」し、それを問題として「認識」する上で障害となる三つの壁・関所のようなものがある。それは
    感情の壁・関所
    知識の壁・関所
    文化の壁・関所
である。これらの壁・関所があると、其処にある「問題」も発見できないし、現に問題があるのにそれを「認識」することができないものである。

橋下氏の言動の表面だけを見、或いは橋下氏の過去の経歴だけを見、或いはもし仮に橋下氏の生い立ちに反感を持ったりすると、すでに「感情の壁・関所」を越えられないことになる。

 また、橋下氏のこれまでの主張に対して批判している著名な学識経験者の意見やマスコミにもてはやされている人の意見だけを聞いてその意見に納得し、他の学識経験者の意見に耳を傾けないでいると、すでに「知識の壁・関所」を越えられないことになる。

 また、もし仮に橋下氏が生まれ・育った環境や、大阪という風土柄などに反発心があるとして、その場の実際を知らず雰囲気も経験せずにいると、すでに「文化の壁・関所」を越えられないことになる。

 橋下氏は非常に荒削りだが、政界再編の起爆剤となるような八策を打ち出した。これには例えば国防軍創設、集団的自衛権の容認、女性宮家創設反対、外国人参政権反対、夫婦別称反対などの具体的なことについては一切触れられていない。

「憲法改正」は八策の第八に掲げられている大項目であるが、憲法の内容をどのようにするのかについては首相公選制と廃止を含む参議院の抜本改革しか掲げていない。一番肝心な憲法第9条の改正や皇統維持のことについて触れていない。

橋下氏は先ず「総論」について自分たちの主張に対し賛同しない人たちとは連係しないと公言した。「各論」はこの「総論」に対して賛同する人たちの大きな塊ができた段階で、橋下氏が大勢を判断して大同小異の結論を導くつもりなのだろう。

 しかしこの八策に掲げる「総論」の中で重要な踏絵になる項目が幾つかある。それらは道州制、教育委員会制度の廃止を含む抜本的改革、年金は積立方式にして富裕層に対しては掛け捨て方式を導入すること、混合診療解禁による医療への市場原理導入、TPPへの参加、国民総背番号制、日米豪での戦略的軍備再配置、首相公選制、廃止を視野に参議院の抜本改革などである。

 橋下氏が「自主独立の軍事力を持たない限り日米同盟を基軸にする」と八策に明記したことについては、憲法を改正して国防軍を創設し、集団的自衛権を容認するという現実的な方向を示したと受け止めることもできる。

 ともかく橋下氏の出現は日本国に一条の光が差し込んできたようなものである。その光がさらに明るく輝くものにするのか、その光が次第に細く消えてしまうようにするのかについては、日本国民の選択と知恵次第である。

 素直になって問題の発見や認識を邪魔する三つの壁・関所を取り払い、問題を見つけ出してそれを認識し、発見され認識された問題を正しい方向へと解決に導くのは日本国民の総意の現れ方次第である。そのためには、決して一部の論者やマスコミなどに影響されてはならない。