2009年9月6日日曜日

小旅行の楽しみ(20090906)

 男と女房は年に何度か小旅行を楽しむ。その多くは旅行会社が企画する旅行である。来月、母の介護のためまた九州の田舎に帰るが、その時は尾道から島々を巡り四国の今治に行き、今治から鉄道で八幡浜まで行き、八幡浜から船で臼杵に渡るルートで途中何泊かしながら帰ろうと考えている。この旅行は自分自身で企画する旅行である。

 旅行会社が企画する旅行には、同じ場所に行くにもどこに宿泊するかによって値段の差がある。同じ宿でもプレミアムでちょっと豪華な部屋に泊まるようなオプションがある。以前旅行会社の企画で超一流とされるホテルに泊まったことがある。オフシーズンであったためか、団体旅行のであるためか、トータルの旅費は比較的安かった。食事は仲居がつく部屋食の懐石料理であった。「お茶はどれにしますか」「これは○○の△△です。(メニューの説明)」とか、何から何まで丁寧で先方は一生懸命お客をもてなすつもりであるが、当の男と女房はかえって息苦しさを感じたものである。

 後で分かったことであるが、その宿には韓国や台湾や中国などから旅行客が大勢訪れるらしい。宿の中ではいろいろな遊びができるようになっている。彼らに和服姿の日本人の女性が仕え、笑顔を振りまきおもてなしをするのである。オフシーズンの団体客は彼女らの格好の訓練の相手である。男と女房は、殿様や奥方様扱いされるのは嫌いであるが、それが自分の優越感を満たすと考えている客も結構多いのかもしれない。

 女房が近くの店で北海道産の新鮮なトウモロコシを買ってきて茹でた。茹であがったばかりのトウモロコシをかじりながら10数年前の夏の終わりごろ、北海道に4泊5日の旅をしたときのことを思い出した。場所は忘れたが札幌から北上するバスの旅の途中でトウモロコシを食べたことがあった。それはとても美味しかった。今日食べたトウモロコシはそのような味がした。夏の終わりごろだったので、サロベツ原野にもうは咲いていなかった。

 男は仕事で北海道の各地を訪れたことがある。女房は友達と利尻や礼文にも行ったことがある。流氷の時期、男と女房は知床に行ったこともある。北海道は車でないと楽しめない場所が多い。男も女房ももう車は運転しない。今度北海道への旅をするときは、観光タクシーを雇い、宿は素朴で質素で名もない宿であるが美味しい手料理を出してくれそうな民宿を選び、時間に束縛されない気楽な旅をしようと考えている。二人とも一流の宿は肩が凝ってノーサンキューである。何年か前、天皇陛下やその他の皇族方がお泊りになったという宿に泊まった時、女房は「こんな恰好で良いのかしら」と言ったことがある。

 旅行会社が企画する旅行は団体旅行という窮屈さはあるが、安い費用で比較的内容が良い。一方個人旅行、特に民宿を泊まり歩く旅は気楽さがあり、時間に束縛されないという利点がある。しかし余程綿密に計画を立てておかないと失敗する恐れもある。昔、子供が小学生のころ、房総半島をドライブしたことがある。夜遅くなって御宿に辿りつき、民宿を探し、今でも忘れていないが静風荘という民宿の門をたたいた。宿の主人が出てきて、「もう夕食の御世話はできないのですが」と困った顔をしながら、「ちょっと時間がかかりますが良いですか?」と言う。「遅くても良いです。何か食べることができましたら」と答えたら「それじゃ、風呂にでも入っていて下さい」と言う。そのようにしてしばらくしたら、炊きたての熱いご飯と、樽一杯の新鮮な刺身盛りが出された。あれは本当に美味しかった。翌朝、宿のおばあちゃんが「これは家でできたトマトです」とお土産まで頂いた。