2009年9月23日水曜日

志ある政治家は少ない(20090923)

 自民党は次期総裁選挙に3人が立候補した。3人の候補者の主張は、谷垣氏が「高速道路建設の意義」をアピールし、西村氏は「必要な公共投資はやらなくてはいけない」と強調し、河野氏は「小泉構造改革路線継続」を訴えた。

 男は将来日本の首相になるかもしれない3人の志の低さに失望した。誰も国のことよりは地方のことだけに目を向け、自民党の再生のことだけに目を向けているかのようである。この度の選挙で初当選した小泉元首相のご二男・進次郎氏(27)の方が余程しっかりしているように男には思えた。彼は三つの安全保障を掲げ、その第一番目に国の安全保障を強調した。さもありなん、彼は昨年夏ごろから、米国ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)で日米関係の研究活動を行っていたという。

 朝日新聞と読売新聞とでは政治的立場が違うが、昨日の読売新聞の「地球を読む」欄に、リチャード・アーミテージ元米国務副長官が寄稿している。彼はアメリカ海軍士官学校出である。彼は日米同盟の核心として。同盟は「日本の管轄下にある本土諸島と領土を、(アメリカは)自国と同じように防衛することを求めている。この神聖な義務は、米軍人の男女が、日本防衛のために血を流し、死ぬ用意があることを意味する」と書いている。

 彼はこの寄稿文の中に「(北朝鮮は)偽礼と違法麻薬を製造し、兵器拡散の機会をうかがい続けている。こうした脅威に、我々が一緒に立ち向かうことは有意義ではないだろうか」と言っている。渡米した鳩山首相はこの寄稿文を読んだだろうか? 岡田外相はどうであろうか? 多分事務方から出されるスクラップ記事集は多すぎて目を通す暇もないことであろう。結局、お二人とも政治家としての資質と教養が表に出てしまうだろう。アメリカ側に「日本の指導者たちは・・」と失望されなければよいが・・・。

 そのような時でも変わらぬ精神を保ちつづけ、日本の危機のとき力を発揮できるのは軍である。軍は国の背骨である。自衛隊は軍という名誉ある地位を与えられない日陰者であるが、自衛官たちは自らが軍人として、国家危急の時に備え、精神と力を鍛錬し続けて欲しい。「アメリカの核の傘は欲しい。でも一緒にその傘の柄を持つのはイヤ!」という妾の根性のような多くの日本人、それに色目を使う小粒の政治家たち、そういうわが国の現状にあっても、自衛隊は、自衛官たちは、耐えて、耐えて頑張って欲しい!(関連ブログ「地震災害への備え、核の圧力への備え(20090907)」)

 さて小泉元首相が北朝鮮との間で取り交わした「日朝平壌宣言」のことについて、新しい国家公安委員長で拉致問題担当の中井氏は、「北朝鮮はこの宣言により拉致問題は解決済みとの立場である」という。男は改めて「日朝平壌宣言」なるものを調べてみた。全文後に掲げるとおりである。これを読んでみると、外交上の取引があって当局は相当苦労したと思うが、中井氏の言うとおりであると思った。小泉元首相は不本意ながら外務省が作成した宣言草案に納得してああいう宣言となったのかもしれないが、北朝鮮に一本取られていた感じである。拉致問題はこの宣言文に一言も出ていない。

 朝鮮半島の北部は古来、日本との間で緊張関係にあった地域である。今の北朝鮮の指導者はその子孫であるかもしれない。戦後、歴史学者が「好太王碑(広開土王碑)」に書かれている「倭軍が攻め込んできたが撃退した」と言う趣旨の記述は、当時の参謀本部が国威高揚のための作り話で碑文そのものを改ざんしたということを主張したということであるが、史実は4世紀はじめ日本(当時の倭国)は朝鮮半島南部の一地域に勢力を置き、百済と連合して北部と対峙していたようである。(関連ブログ「古代筑紫(九州)の大王の話~戦後の歴史教育を憂える~(20090909)」)

 自民党総裁選立候補者の3人は、「国よりは地方」とか「自民党敗因の分析」とか「自民党再生」などに頭を使うよりは、たとえ総裁選に敗れても自分の政治家としても志を訴えて欲しかった。もっとも、そのような「国を憂える」大志は持ち合わせていないのかもしれないが・・・。小泉進次郎氏よ、一日も早く首相になって欲しい、と男は思う。


『日朝平壌宣言』全文

平成14917

小泉純一郎日本国総理大臣と金正日朝鮮民主主義人民共和国国防委員長は、2002917日、平壌で出会い会談を行った。
両首脳は、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが、双方の基本利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものとなるとの共通の認識を確認した。

1.双方は、この宣言に示された精神及び基本原則に従い、国交正常化を早期に実現させるため、あらゆる努力を傾注することとし、そのために200210月中に日朝国交正常化交渉を再開することとした。
双方は、相互の信頼関係に基づき、国交正常化の実現に至る過程においても、日朝間に存在する諸問題に誠意をもって取り組む強い決意を表明した。

2.日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した。
双方は、日本側が朝鮮民主主義人民共和国側に対して、国交正常化の後、双方が適切と考える期間にわたり、無償資金協力、低金利の長期借款供与及び国際機関を通じた人道主義的支援等の経済協力を実施し、また、民間経済活動を支援する見地から国際協力銀行等による融資、信用供与等が実施されることが、この宣言の精神に合致するとの基本認識の下、国交正常化交渉において、経済協力の具体的な規模と内容を誠実に協議することとした。
双方は、国交正常化を実現するにあたっては、1945815日以前に生じた事由に基づく両国及びその国民のすべての財産及び請求権を相互に放棄するとの基本原則に従い、国交正常化交渉においてこれを具体的に協議することとした。
双方は、在日朝鮮人の地位に関する問題及び文化財の問題については、国交正常化交渉において誠実に協議することとした。

3.双方は、国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認した。また、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した。

4.双方は、北東アジア地域の平和と安定を維持、強化するため、互いに協力していくことを確認した。
双方は、この地域の関係各国の間に、相互の信頼に基づく協力関係が構築されることの重要性を確認するとともに、この地域の関係国間の関係が正常化されるにつれ、地域の信頼醸成を図るための枠組みを整備していくことが重要であるとの認識を一にした。
双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。また、双方は、核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した。
朝鮮民主主義人民共和国側は、この宣言の精神に従い、ミサイル発射のモラトリアムを2003年以降も更に延長していく意向を表明した。

双方は、安全保障にかかわる問題について協議を行っていくこととした。

(以下、省略)