2009年11月29日日曜日

詩吟サークル(20091129)

 男は10年前東京都内のある区のセンターで「詩吟を楽しむ会」という詩吟サークルを立ち上げ、現在もそのサークル活動を続けている。立ち上げのとき参加してくれた方々は今も辞めずにそのサークルで活動を続けてくれている。活動は毎月2回、第2、第4土曜日の夜行っていて、その地域の活動団体として区に登録されている。公共の施設を利用するのでサークルのメンバーは5人以上であること、さらにその区の住民が半数以上その中にいなければならないという制約がある。地域活動といっても対外的な活動を行っているわけではない。区の住民の相互交流による地域のコミュニティの形成に寄与する活動が求められている。しかし過去に数回、区内のあるデイサービス施設を訪問したことはある。

 この詩吟サークルについて5年前、区の広報で案内したことがある。その時その広報を見て参加してくれた年配の男性が今も一緒に活動を続けている。その後広報はしていなかったが一月前たまたま区のセンターにきた婦人が掲示板に書かれているこの詩吟サークルの存在を知り、メンバーに加わってくれた。このことがあって男は今後一層力を入れようと思うようになった。

 区のセンターでは登録されている諸団体の活動の状況を広報するため毎年10月に発表会を行っているが、男はその発表会に「詩吟を楽しむ会」として来年から参加することにし、メンバーの皆に諮った。菊池寛の『恩讐の彼方に』を題材とした漢詩『青の洞門』をテーマにして朗読と吟詠と、できれば踊りも入れた構成で10名以上のメンバー全員が参加する発表会にしようと考えている。皆この提案に乗り気である。

 男が主宰するこの「詩吟を楽しむ会」では、吟詠の実力を評価して「認定証」を発行することにしている。この認定証は流統・会派として運営されている一般の組織で発行されている「許証」のようなものである。この認定のための審査のため一定の基準を定め、審査会には男の友人に来て頂いて第三者として吟詠力を評価してもらうようにしている。去年は10名ほどのメンバー全員それぞれのレベルに挑戦して認定証が付与された。

 認定証には男とその友人がそれぞれ押印する。「許す」という大仰なものではなくA4判のちょっと厚めの紙切れ一枚に男がパソコンで作った「○○を認定します」と印刷したものに男と第三者として評価してくれる友人が自分の印を押すだけのものである。一般に稽古事で何某かの伝位を貰うとき儀式を行い、伝位に応じて予め決められているお金を払い、立派な証状を貰って一層有難味が増すようになっている。しかし「詩吟を楽しむ会」では自分の実力に応じて認定されるだけである。費用は用紙代など実費程度しかかからない。

 一派に稽古事において流派ごと「許す」と言って与えられる「許証」に「皆伝師範」とか「準師範」とかいう伝位が記載されている立派な証状を貰うと、それ見る人をして「ほう!」と感心されるだろう。しかし柔道や剣道などの武術の証状と違って、詩吟において「師範」と書かれていても人に必ずしも教える実力があるわけではないのが実情である。その点男が主宰している会では実力がなければ「準師範」や「師範」の資格は与えられない。男が主宰している「詩吟を楽しむ会」では、デイサービスや老人会などで詩吟を披露するとき自ら楽器を奏でて詠うことが出来なければそれらの資格は与えられないのである。

 男は「詩吟を楽しむ会」として来年初めて参加する発表会に向けた練習、そしてその発表を行うことにより、メンバーの実力が一層向上することを期待している。