2009年12月23日水曜日

縄文人に学ぶ(20091223)

男は陶芸スクールに行くのが多少億劫になっていた。毎週決まった日に行くのを負担に思うようになっていた。先週焼きあがっていた楕円形の大きい惣菜入れと、中くらいのお惣菜入れを見たとたん出来上がりが良くないと思ったので、それらをスクールの自分の棚に置いたままにしてあった。スクールに行く足が重かったのは、以前のように満足できるものが出来ないので気が滅入っていたせいもある。
男はスクールに着いて先週持ち帰らなかった作品を貸室担当のI先生に見せ、「これをもう一度釉がけした方がいいですかね?」と聞いた。彼女は「これよく出来ていると思いますよ。」と言う。男は出来上がりが良くないと思っていた作品を褒められてそれまで滅入っていた気持ちがいっぺんに晴れた。次回もっと良い物を作ってやろうと意欲が湧いてきた。
男が利用している貸室は広くは無いが78人が一度に作業することができる。そこでは男より陶芸歴の古い人たちがそれぞれ立派な作品を作っている。男より年長の男性はユニークな形の花器を仕上げて本焼きに出したあと、手のひらに入るようなフットボールの形をしたものを作っている。聞くとそれは笛だという。テーブルの上に素焼きが終わったその形のものが二つ三つ置かれている。見るとこの中央に丸い小さな穴が開けられている。テーブルの上に4000年前ごろの縄文人の遺跡から出土したという精巧な繊細な形をしたイヤリングとか笛の写真が置いてあった。その人はそれを見ながら笛を作ったという。
男は自分の棚に余った粘土を保管していた。それは縄文人の笛を一つ作るには丁度よい分量である。男はそれを家に持って帰り、家で笛を作り、乾かして年明けてスクールに持って行き素焼きに出そうと思った。明日早速縄文人の笛を作ってみようと思う。吹いて音が出るものが出来たら来年3月満3歳になる孫にプレゼントしてやろうと思う。縄文笛なら形が小さいので粘土さえあれば家でいくらでも作ることができる。笛の形が出来上がれば縄文模様ならぬ現代模様を刻んで乾かし、乾いたものをスクールに持って行き素焼きに出し、素焼きが出来上がれば釉薬をかけて焼く。陶芸の楽しみがまた一つ増えた。
縄文人の頭骨の特徴は眉間が突出し、鼻のつけ根が深く凹み、鼻は高く隆起していて眼窩は四角張っていて、歯は小さく、上下の歯がぴったりと合わさる噛みあわせが特徴であるという。男の顔の特徴からすると、男の遺伝子には縄文人のものが多く含まれているかもしれない。ともかく縄文人に学びながら陶芸をやるのはまた楽しいことである。

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