2010年11月3日水曜日

帰郷(20101103)

    福岡に住む叔父が90歳で他界した。肺炎だったという。その叔父は男の亡父より10歳年下である。男はその葬式に出るため急きょ帰郷した。羽田から大分に飛び、別府で一泊して翌朝特急に乗り、11時からの葬儀に間に合うようにした。

    73歳の男は叔父が死んだという話を今朝聞いた。初めは遠いので香典だけ送って帰らぬつもりだった。しかしその叔父は男の父が30数年前死んだとき亡父の葬儀に来てくれた。男の亡父も長男であったし自分自身も長男である。長男は長男らしく振る舞わなければならない。これまで遠方に住んでいるという理由で親戚には相当義理を欠いてきた。自分自身もあの世が近い。これまでの不義理はこれから良く義理を果たすことで帳消しにしてもらおうと考えている。従兄弟たちも福岡で老人に会うのを楽しみにしてくれている。

   男はインターネットで航空券とホテルとJR九州の特急列車の指定席を予約した。今まで全く念頭になかったが、今回初めてスカイネットアジア航空(SNA)を使った。理由は65歳以上片道14100円で安いからである。羽田発17時25分発大分行きに乗った。以前はANAでも機内サービスでコーヒーなど出してくれたが経費節減でそれが無くなっている。しかしSNAではそれがある。飛行機はコンパクトで座席は左右3席づつである。機内のアテンダントは女性が二人だけである。無駄が一切ない快適な空の旅であった。

   大分空港に着いて手荷物を受け取り表に出るとバスが待っている。別府・大分行きのバスに乗る。料金1450円で別府北浜に着く。予約したホテルは別府駅近くのビジネスホテルである。北浜からそこにゆくのに徒歩で10分ほどかかるが、北浜のバスターミナルではタクシーが待ってくれている。ホテルまで620円。ホテルはじゃらんのポイントを使うので朝食付きで4000円ほどである。ホテルの部屋に荷物を置いて遅い夕食をとりに出る。駅の建物内にある「豊後茶屋」という店で大分名物のだんご汁とやせうまを取る。味は、ま、こんなものかな、という程度であった。老人の方がもっと美味しく作れるだろう。

   男は九州に帰ったときいつも感じることがある。それは、其処が自分の生まれ故郷であり、竹馬の友が居り、従兄弟・従姉妹たちが居る土地であり、横浜や東京などの大都会と違う雰囲気が漂うところである。暖かなやさしさを感じるところである。都会地は都会地でいいところも多い。便利で機能的で人間関係のわずらわしさもない。しかしそのような都会地からときどき九州に帰ると、何故か心の安らぎを感じる。

    男は此処に主たる住居を移し、都会地との間を逆方向にときどき移動する生活を夢見る。つまり7割大分に住み、3割横浜に住む。ときどき大分空港から羽田空港に向かう。今と逆である。大分で晴耕雨読の暮らしをし、たまに都会地に出て刺激を受ける。やろうと思えばやれないことはない。住む家もある。庭で多少の野菜は作れる。借りる土地はある。

    男はホテルの部屋でそのようなことを夢見ながらブログの記事を書いていると、携帯電話のベルが鳴った。女房からである。男は今夢見ていたことを女房に語った。女房は笑いながら「お母さんと一緒に住んだら」と言う。男は明日夕方その継母・91歳に会う。