2012年4月15日日曜日


精神的貴族の暮らし(20120414)

 この時期「花冷え」という言葉があるが寒暖の差が大きい。男は冬用の衣服を着用して夕方近くに外出した。男は月二回、東京都内のある住区センターで詩吟のサークルを主宰し同好者に詩吟を教えている。メンバーは10人ほどで実年・高齢の女性たちが主である。皆その会を楽しみにしてくれているので、講師である男も皆が楽しいようにいろいろ気配りをしている。普通詩吟教室と「教室」という名前が付くと硬い感じになるが、ここは「楽しむ会」の名称どおり「詩吟を楽しむ」ことが主目的である。会費は担当の女性が1500円と決めている。メンバーの中には都内に息子さんが住んでいて、ときどき伊東から出て来て参加する人もいる。男はその会を10年以上続けている。初めの頃は「教室」としてメンバーを増やし、本格的に詩吟を学びたいという人を伝統的な詩吟の会に送り込むことも念頭にあった。その区の広報に案内したとき23名加わったがその人たちは徐々に抜けて、今いるメンバーは当初からの人に加えて地元の70歳以上の女性たちが何名かそのセンターでこの会のことを知って参加している。
 
男は毎年その会のための詩吟テキストを作成して無料で配っている。今年はこれまで勉強した吟題の中から各自がもう一度勉強したいというものをそれぞれ選んで貰って、毎月2題づつ勉強している。今月は『短歌・源実朝「箱根路を」』と『駱賓王「易水送別」』である。勉強の要領は、先ず詩文について若干の説明を行い、次に男が模範吟を示し、その次に一節づつ男が詠い、その後に続いて皆が声をそろえて男が詠ったとおりに詠う。次に2、3名づつのグループで詠ってもらう。その詠い方について良かったところを褒め、節の難しそうな部分について分解して理解させる。2週間後、一人一人個別に詠って良い点を褒め、改善すべき個所について指摘する。一人一人詠うことを独吟というが、その独吟は時間の許す限り2度以上行って貰う。上手く詠えると意欲が湧いてきて実力が上がる。
 
男と女房は母の介護のため明日10時半発の飛行機で九州の田舎に帰る。そのため今日はその準備で忙しかった。田舎の家では以前ADSLを引いてインターネットができるようにしてあったが、母が施設に入ったので廃止した。そのため別の方法で田舎でインターネットを出来るようにしなければならない。その方法とはスマートフォンを無線ルーターとして使うことである。女房のiPadと男のLifebookノートパソコンがそのスマートフォンと無線でつながるように設定しておけば、携帯電話が使えるところであれば何処でもそれらの情報端末をインターネットにつなぐことが出来る。それが出来るように設定を終えた。
 
かくして今日も一日中多忙であった。男が詩吟で外出中女房は「立つ鳥跡を濁さず」の如く家の中をきちんとした。もし万一飛行機事故などで二人とも「あの世」に行ってしまった後、「この世」の人から笑われないようにするためである。現役ならば会社でバリバリ仕事をしているところであるが、年金暮らしで時間があるからこのようなことができる。有り難いことである。男と女房は決して金持ちではなく、物持ちでもなく、車も持たず、海外旅行もせず、またしたいとも思わず、贅沢もせず日々質素に暮らしているが、傍から見れば優雅に見えることだろう。「箱根路を」の実朝のような貴族ではないが、男と女房は精神的には貴族のような余生を送っていると自身で思っている。