2012年6月6日水曜日


万葉集に学ぶ「一つ松幾代か経ぬる吹く風の声の清きは年深みかも」

 人は「まだまだ若い」というが、75歳を過ぎれば相当高齢である。80歳前後であの世に行く人も多い。そう考えると老い先そう長くもないので今後の生き方を考えた。詩吟で西行の「至善」という詩を吟じたことがあった。その自分の下手な吟詠をブログ「吟詠」で公開しているが、その詩の内容は以下のとおりである。

 至 善     西  行

晴れに非ず 雨に非ず 睡蓮の天         山に非ず 林に非ず 在家の仙
一日を一生として 興究(きょうきわま)りなし  老楽は唯至善を行うにあり

 作者・西行(俗名:佐藤義清(さとう のりきよ、憲清、則清、範清とも書く))は、元永元年(1118年)に生れ、 文治6216日(1190323日))に没した平安末期から鎌倉初期にかけての武士・僧侶・歌人である。

 西行は生前、「ねかはくは 花のしたにて 春しなん そのきさらきの もちつきのころ (山家集)」という歌を作っており、その歌のとおり陰暦の2月である如月(きさらぎ)の満月に近い日(陰暦216日)(1190323日)に73歳で没したといわれている。ちなみに陰暦で月齢14日を小望月(こもちづき)と言う。

 自分も西行のようにありたいと思い、「老楽は唯至善を行う」べく、遅ればせながら手始めに短歌に親しむことにした。先ずは万葉集から選ぶ。

一つ松 幾代か経ぬる 吹く風の 声の清きは 年深みかも

ひとつまつ いくよかへぬる ふくかぜの
        こえのきよきは としふかみかも

(巻六・一〇四二 作者:市原王)

 3.11巨大地震と大津波で三陸海岸の陸前高田市で一本の老松が残った。人々の懸命な保存努力のかいなく、その松は枯れた。哀しいことである。

 作者・市原王は天智天皇の曾孫安貴王の子であり、万葉集に短歌八首を残しているという。しかし、まだ確認していない。生没年未詳であるという。