2012年6月28日木曜日


天皇がいる国の性格について考える(20120628)

 「万葉集に学ぶ」と題して万葉集を読みながら古代の歴史も学んできたが、この辺でちょっと一息入れることにした。天武天皇が即位する前に起きた大友皇子の悲劇、天武天皇が崩御された後に起きた大津皇子と妃・山辺皇女の悲劇の真の原因は何だろうかと疑問を持った。歴史家・学者らは簡単に皇位継承の争いのように片付けてしまうが、本当にそうだろうか?

 日本と云う国は古代からずっと世界に類例がない構図があるように考えられる。それは万世一系の天皇の存在である。ローマ皇帝もシナ(中国)の皇帝も、天皇とは全く異なる存在的性格がある。ローマ皇帝やシナの皇帝は人民との間に心理的な垣根がある。両者の間に祖霊を同じくするという‘血のつながり’が全くない。ところがわが国では古事記にあるように‘天皇と臣民’との間には‘血のつながり’がある。国の民は人民ではなく‘臣民’であった。天皇はその祖霊に最も近い存在で現人神であった。大東亜解放戦争終結後、天皇は‘人間宣言’をされたが、それは、言うなれば‘天皇と臣民’という言い方でなくGHQの圧力を受けて教育勅語を廃止したことにより‘天皇と国民’という言い方にしたというだけである。

 教育勅語には“朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲムルコト宏遠ニ徳ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシ世々厥ノ美ヲセルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ・・”とある。その‘臣民’は、普遍的な意味での国民ではなく、古事記にあるとおり、先ず天皇の祖先は神代のとき高天原から降臨された。その祖先の神は日本の国土をお造りになり、天皇に従う人々をお造りになられた。故に日本の国土に生まれ人々は天皇の臣民なのである。つまり、天皇と臣民とは一心同体なのである。天皇と臣民とは支配者と被支配者という関係ではない。英語で天皇のことをエンペラーというが、これは間違っている。英語でそういう言葉しかないから、英語でそう訳されているに過ぎない。

 このような日本に古代、非常に多くの人々が朝鮮半島から渡ってきて日本に帰化した。シナの呉(江南地方)からも若干の職業集団が日本に渡ってきている。そのことが『日本書紀』に書かれている。大東亜解放戦争終結後、日本国籍でなくなった何十万人という人々が日本に残り、あるいはGHQ支配下新たに日本に渡ってきて永住権を得ている。それら在日外国人たちの一部やその子供たちは徐々に日本に帰化している。日本に永住している在日外国人の殆ど多くは朝鮮半島人である。

 日本と言う国を構造的に観た場合、特殊的な部分は天皇・皇統(男系)・皇室・皇族である。普天的な部分は日本人・日本語・日本の文字(漢字・ひらがな・カタカナ・ローマ字)・伝統・文化・風習・神社・寺などである。この特殊性と普遍性は一体である。この特殊性が日本を日本としている非常に重要な部分である。

 古代、この特殊な部分に‘帰化人’があった。漢字そのものは魏志倭人伝にもあるとおり倭国(日本)の国々の間で文書が行き来していたので、すでにそのころ漢字が使われていたが、この漢字をよく使い、朝廷での文書業務を良く行わせるため応神天皇十五年(284)秋八月(あきはつき)朔(ついたち)丁卯(ひのとのうのひ)に朝鮮半島から渡来して帰化していた阿直伎(あちき)という人に「如(もし)(いまし)に勝(まさ)れる博士(ふみよみひと)(また)(あ)りや」との御下問に対し、阿直伎の推薦により、翌年春二月(はるきさらぎ)、朝鮮半島から王仁(わに)という人が渡来してきている。
 
 阿直伎は阿直岐史(あちきのふびと)の始祖(はじめおや)となり、王仁は書首(ふみのおびと)の始祖になって、それぞれ天皇から‘直’という氏姓を与えられている。彼らの子孫は朝廷における文書業務などに従事していた。‘直’姓は、阿直伎や王仁だけではなく東漢と呼ばれたすべて人々に与えられていた。天武天皇は天武天皇六年(677)六月、彼らに対して「お前たちの漢直(あやのあたひ)の氏(うじ)を絶さないようにと、これまでお前たちの不届きな行為を大目に見てきたが、今後はそのような先例によらず、赦さない」と言い渡している。

 古代の帰化人たちは、千数百年を経て古代の倭人と完全に同化し、血が混じり合った。今の日本人の誰も必ずその形質の一部に帰化人たちのDNAによるものが含まれている。在日外国人もいずれ年月を経て同様になるだろう。そして‘臣民’になってゆくだろう。それがそれぞれの子子孫孫に至る幸福につながるものであることは確かである。

日本民族はこのように‘多様な’出自、しかし混血した人々の集合である。それゆえに日本人は創造性に富み、協調性があり、規律がある。それも構造的に天皇・皇統(男系)・皇室・皇族という特殊部分と、日本人という普遍部分も総合的なものである。この総合性を大切に思い、永住権を持っている在日外国人であろうと、帰化した外国人であろうと、意識の上で積極的にこの特殊部分に自ら一体となるようにあることが、日本人及び日本に住むすべての人々の幸せにつながることは間違いない。

 今、わが国において天皇・皇統(男系)・皇室・皇族を重んじないような動きがあるが、これは我が国にとって非常に危険なことである。日本人は今一度、教育勅語の本旨に注意を向け、わが国の性格を普遍性と特殊性に分解して理解し、我々の子子孫孫に伝えてゆくようにしないと、日本は日本で無くなってしまうだろう。