2012年6月20日水曜日


万葉集に学ぶ「うつせみと 思ひし時に 取り持ちて 我が二人見し・・」(20120620)

 過日男は5歳も年長の友人と10数年ぶりに再会した。その友人は奥様を昨年がんで亡くされた方である。また昨日男は昨年奥様を亡くした竹馬の友に青森旅行の土産などを手紙を添えて宅急便で送った。この年になると友人が死んだとか奥様を亡くしたとか、動脈瘤の手術を受けたとかいう話を聞くことが多い。男の竹馬の友への贈り物の堤の中には、男の女房がその友のためわざわざ買い求めてきた今時流行のしゃれたステテコが一枚入っている。それはしゃれた袋の中に入っている。それは、妻を亡くし、知的障害の息子と二人で暮らしている男の竹馬の友の日々暮らしを思いやってのことである。

 萬葉集巻第二に「柿本朝臣人麻呂、妻の死にし後に、泣血哀慟(きふけつあいどう)して作れる歌二首幷に短歌」というのがある。その二首目の歌を以下に転写する。

二一〇 
うつせみと 思ひし時に 一に云う「うつそみと 思ひし」 取り持ちて 我が二人見し 走り出の 堤に立てる つきの木の こちごちの枝の 春の葉の しげきがごとく 思へりし 妹にはあれど 頼めりし 児らにはあれど 世間(よのなか)を 背(そむ)きしえねば かぎろひの もゆる荒野に しろたへの 天領巾(あまひれ)隠り とりじもの 朝立ちいまして いりひなす 隠りにしかば 我妹子が 形見に置ける みどり子の 乞ひ泣くごとに 取り与ふる ものしなければ をとこじもの わきばさみ持ち 我妹子と 二人我が寝し まくらづく つま屋のうちに 昼はも うらさび暮らし 夜はも 息づき明かし 嘆けども せむすべ知らに 恋ふれども 逢ふよしをなみ おほとりの 羽易(はがひ)の山に 我が恋ふる 妹はいますと 人の言へば 岩根さくみて なづみ来し 良けくもぞなき うつせみと 思ひし妹が たまかぎる ほのかにだにも 見えなく思へば

    短歌二首
二一一 去年(こぞ)見てし 秋の月夜は 照らせども 相見し妹は いや年離(ざか)
二一二 ふすまぢを 引手の山に 妹を置きて 山路を行けば 生けりともなし