2011年4月8日金曜日

品不足を見て買いに走った消費者心理について思う(20110408)

 震災発生後、パンや牛乳やヨーグルトや納豆や飲料水などが店頭から消えたことがあった。原因は例えばヨーグルトの場合、一定の温度を保って発酵させるヨーグルトの生産が計画停電のため停止となったためであるし、納豆の場合、商品に貼るシールを生産する工場が大津波により破壊されたため、納豆に貼るシールが手に入らなくなったためである。

飲料水の場合は、福島第一原子力発電所の被災事故により、水道水が放射能により汚染されたためである。乳幼児をもつ母親は特に不安になって汚染されていない水を求めた。

そのような状況に加え、店頭から日ごろ何時でも手に入る商品が消えて無くなると、一部の主婦たちが「これは大変なことになった」と不安になり、買いだめしておこうという心理が働き、買いに走った。これが品不足に一層拍車をかけた。

 二人暮らしの老夫婦は、毎朝ホテルパンを食べている。そのホテルパンを買うため10人ぐらい列を作って並んだ。自分の順番が次にくるとき、前の中年の女性が「(2斤が一本の出来たてのホテルパンを)3本下さい」と店員に注文した。店員は「すみません、ひとり一本にして貰っています」と、その中年の女性をやんわりたしなめた。するとその女性は、さすが恥ずかしいと思ったか、素直に応じた。

 公衆道徳について思うことがある。電車やバスの車内放送で携帯電話の使用について丁寧に注意している。そのような注意が無くても自然にできている秩序もある。例えば駅などのエスカレーターに乗る時、東京方式と大阪方式がある。つまりエスカレーターの左側に並ぶか右側に並ぶかの違いである。先を急ぐ人はその右側か左側かを歩いて通る。

携帯電話の使用に関する社内放送について、その放送を無視する者がたまにいる。しかし、その車内放送の効果は十分ある。日本人は一般に、公衆道徳について公的な立場からの依頼・指示・指導に従う特性があると思う。

 今後また災害などにより品不足が生じたとき、不安になって買いに走る消費者に対して、もし売り子の店員が「震災で入荷量が減りました。出来るだけ多くの人に品物が届くように、一人何個まで、一回限りでお願いします」と細やかに丁寧に話すならば、消費者は多少不満であっても「この際仕方がない」と店員の依頼に納得するだろう。

 日本人は秩序を守ることが習慣づけられている。何か緊急な事態が起きたとき、誰か権威がある立場にある人が号令をかければ、日本人はその指示に従う。日本では、特に田舎では、もしある人が秩序を守らないと、その人は周囲の人から白い目で見られる。日本人はそれが怖いと思うし、恥ずかしいと思うから大勢の人の考え方から外れることをする人は極めて少ない。殆どの日本人は、所属集団の中で皆と同じような考え方をする。

 都会地では若者がそのような日本人の特性に反発し、個性を強調して時には皆から外れた行動をすることがある。しかし、所詮日本人は日本人。その血の中には遠い昔から連綿として受け継いできた日本人の特質がある。だから日ごろいがみ合っていても日本人全体に降りかかるような危機の時には、日本人は団結し、非常に強い力を発揮するのである。

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