2011年7月10日日曜日

日露戦争前哨戦(続)(20110710)

 日露戦争の原因とその後の情勢を知るということは、現代において中国の台頭、「覇権主義」だと言われる「自存」願望の論理を理解する助けとなると私は思う。当時の日本は、生き残るために必死であった。今の中国も、生き残るために必死である。そのことを決して軽くみてはならぬと私は思う。

 書店や図書館には近代における日本とロシアの関係、日本と中国や韓国との関係に関する書物が沢山並べられている。それらの書物の記述は専門的であったり、独断的であったりして我々のような一般庶民にとって距離感があるものである。その点、秋山氏の論文や著作は分かりやく、歴史の真実を知るうえで役立つものである。

 秋山氏は、“日露戦争勃発の原因は、ロシア政府における政策の二極分裂・統一性の欠如に起因すると見ることが出来るのである。そして、その政策の二極分裂・統一性の欠如は、つまるところ、極東総督アレクセーエフの剛直にして独断的な性格に由来するものであった。日露交渉のロシア側代表者であるアレクセーエフは、その成否を握る重要な立場にあって、駐日公使ローゼン等の進言や報告により日本側の真意や情勢を十分に察知し得た筈である。他面、露国極東軍の総司令官としてその戦力の限界・弱点を悉知していた筈である。もし、彼が今少しく柔軟な思考を持ち、ニコライ二世に対してその真実を吐露し、勇気をもって平和を選ぶ途を提案すれば、日本との妥協が成立して戦争を回避できたに違いない。アレクセーエフの性格がそれを許さず、最後まで強硬論を主張して、遂に破局を招いたものともいえる。”と言っている。

 今、中国政府内における状況はどうなのであろうか?我が国政府の情報機関は、中国の「覇権主義」と言われる動きについて、どういう情報を得、分析しているのであろうか?先般、日本の松本外務大臣と中国の楊潔篪外交部長(外務大臣)と会談し、南シナ海問題を話し合った際に、楊部長は「南シナ海の問題は当事国同士の2国間で話し合って解決する」旨言った。東シナ海問題もそのスタンスである。

その一方で、中国政府・共産党は奄美・沖縄・南西諸島・台湾に至る列島を中国の領土とする意図を取り下げようともしない。今、日本は中国と密接な経済関係がある一方で、中国は日本の領土・領海・領空の一部を奪い取ろうとする‘敵’である。「領土問題」を「紛争問題」に変えようと意図している。そのことを日本国民は認識すべきである。今、与野党を含め、愛国の志は熱情に欠ける今60代以上の政治家たちに、この国を任せておいてはこの国はやがて亡びてしまうことだろう。秋山代治郎氏の著書の引用を続ける。

“コレエーツ号が攻撃を受けたことを、露艦側は黙っていた訳ではない。・・(中略)・・ルードネフ大佐は、碇泊中の各国軍艦の艦長と相談した。そしてその先任艦長である英艦タルボット艦長レヴィス・ペイリー大佐が各国艦長の総代として、仁川港内に碇泊している日本艦隊の先任艦長である「高千穂」の毛利一兵衛大佐に抗議を申し込んで来た。”

                                    (続く)

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