2011年7月30日土曜日

日露戦争前哨戦(補記) (20110730)

 明治361030日付のロシアに対する確定修正案にある「第六条 韓国ト満洲トノ境界ニ於テ其ノ両側各五十キロメートルニ亘リ一ノ中立地帯ヲ設定シ云々」の条項に対し、ロシアは1903年(明治36年)1211日に「韓国領土ニシテ北緯三十九度以北ニアル部分ハ中立地帯ト見做シ云々」と対案を示してきた。日本はこれに対して年明けた1904113日の日本の最終提案で「全文削除」を要求した。

その「韓国領土の三十九度以北」ということついてロシアはこだわっていた。日本側が1030日に出した確定修正案を出す前の103日、ロシア側は全く同じ文言で提案していた。ロシアが満洲のみならず、北朝鮮の大部分をも領有しようとしていた。

さらにこれも全く同じ文言で103日の提案にも、1211日の提案にも「韓国領土ノ一部タリトモ軍略上ノ目的ニ使用セサルコト及ビ朝鮮海峡ノ自由航行ヲ迫害シ得ヘキ兵要工事ヲ韓国沿岸ニ設ケサルヘキコトヲ相互ニ約スルコト」と書いてよこした。

これについて、日本側は明治361030日の確定修正案で「朝鮮海峡ノ自由航行ヲ迫害シ得ヘキ兵要工事ヲ韓国沿岸ニ設ケサルヘキコトヲ日本ニ於テ約スルコト」とロシア側に譲歩して提案しているので、「韓国領土ノ一部タリトモ軍略上ノ目的ニ使用セサルコト」という文言の削除を要求した。(以上、秋山氏論文引用)

さらに、日本は満洲に関するロシアの要求を容れて最終提案をしている。以下、秋山氏論文第二章注釈(26)を全文引用する。

 “前掲『日本外交文書』第三十七巻第一冊四五、六三文書[一九〇四年一月一三日にローゼンに交付した日本の最終提案]

一、露国対案第五條ハ其ノ前半即チ「韓国領土ノ一部タリトモ軍略上ノ目的ニ使用セサルコト」ノ一句ヲ削除スルコト

二、露国対案第六條中立地帯設定ニ関スル条項ハソノ全文ヲ削除スルコト

三、満洲ニ関スル露国政府ノ提議ハ左ノ如ク修正シ之ニ同意スルコト

満洲及其ノ沿岸ハ日本ノ利益範囲外ナルコトヲ日本ニ於テ承認スルコト但シ露国ハ満洲ノ領土保全ヲ尊重スルコトヲ約スルコト

露国ハ満洲ノ区域内ニ於テ日本又ハ他国カ其ノ清国トノ現行条約ノ下ニ獲得シタル権利及特権ヲ享有スルコトヲ阻礙セサルヘキコト

韓国及其ノ沿岸ハ露国ノ利益範囲外ナルコトヲ露国ニ於テ承認スルコト

四、露国対案ニ左ノ一條ヲ加フルコト

日本ハ満洲ニ於ケル露国ノ特殊利益ヲ承認シ并ニ利益ヲ保護スル為メニ必要ナル措置ヲ取ルハ露国ノ権利タルコトヲ承認スルコト”

 日本は、武士道精神のもとロシアにぎりぎりのところまで譲歩し、日本が韓国及び中国を列強からの浸食を防ぎ、かつその近代化のため戦ったそれぞれの国の領土の保全に血のにじむような努力をしたのだ。それはこの日本の「自存」のためでもあったのだ。(続く)

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