2011年9月7日水曜日

渡部昇一『日本史』を読んで日本人はどうあるべきか考える(8) (20110907)

 皇室の起源について、渡部昇一『日本史』を括弧(“”)で引用する。(以下同じ)

 “皇室の起源にかんしては、今でも伊勢神宮が尊ばれ、多くの神社が生きていることを見逃すわけにはいかない。これも昔からの伝承を伝えておく必要があるからだろう。

 日本の神話では、最初の神様は男女の別がない。それが伊弉諾尊(いざなぎのみこと)・伊弉冉尊(いざなみのみこと)から男女神に分かれて、その男女の神が日本列島の島々をつくったことになっている。

 そして伊弉諾尊(いざなぎのみこと)・伊弉冉尊(いざなみのみこと)には三人の子供が生まれる。後に天照大神(あまてらすおおみかみ)といわれる大日孁貴(おおひるめのむち)、それから月読尊(つくよみのみこと)、素戔嗚尊(すさのおのみこと)である。

 このうち月読尊は神話ではほとんど語られることがないが、これが南方から来た民族の系譜だとすれば、再び故郷に戻ったものと考えることもできるだろう。”

 私は、この部分に関してロマンを感じる。月読尊で代表される一族が再び故郷に戻ったというよりは、この一族は奄美・沖縄・八重山を経て台湾・フィリッピン・インドネシアと移動し、その間にアフリカを出発して別のルートで南洋諸島にやってきた人々と交流し、「島生み」神話を伝えた後病気か何かで途絶えたのではないかと。伊弉諾尊・伊弉冉尊(以下、イザナギ・イザナミ両神という)の一族の先祖がはじめ長江流域で高い文化を持った一族であるとすれば、現地人に尊敬されたに違いない。南洋諸島に残る神話が日本の神話に共通している部分があるのはそのためであると私は思う。

 “女神である天照大神と素戔嗚尊(すさのおのみこと)は姉弟の関係だが、「誓約(うけい)」という関係にある。その間に子供が生まれたことが伝えられている点から、この「誓約」とは「結婚」を意味していると考えられる。そして五人の男の子と三人の女の子が生まれる。男の子は天照大神が、女の子は素戔嗚尊(すさのおのみこと)が引き取ったと伝えられる。”

 天照大神と素戔嗚尊の部分について『古事記』にこう書いてある。「然らば汝(いまし)の心の清く明(あか)きは何(いかに)して知らむ。」とのいりたまひき。ここに速須佐之男命答へ白ししく、「各誓(うけ)ひて子生まむ。」とまをしき。故(かれ)ここに各天(あめ)の安(やす)の河(かは)を中に置きて誓(うけ)ふ時に、(以下略)。原文は「然者汝心之清明、何以知。於是速須佐之男命答白、各宇氣比而生子。故爾各中置天安河而、宇氣布時」(『古事記』倉野憲司校注・岩波文庫より)

 『日本書紀』には姉(天照大神)弟(素戔嗚尊、『古事記』では須佐之男命)との結婚についてもっと具体的に書いてある。また姉弟の性交の様子はあからさまには書いていないが、その部分は『古事記』も『日本書紀』も艶っぽい表現で書かれている。

 なお、イザナギ・イザナミ両神が生んだ子に住吉大神あり、これは航海を司る神である。これは全国各地の海部を中央で管理する伴造・安曇連等が祭る神である。  (続く)

0 件のコメント: