2012年1月9日月曜日


『安岡正篤 易経講座』に学ぶ(13)(20120109)

 “陰の特徴と弱点

 そこでこれに相俟(あいま)って、分化するを統一し、顕現するを含蓄し、全体性と永続性を保つハタラキがある。それが陰のハタラキであります。

 統一・含蓄・全体性・永続性の持続これが陰の特徴であります。

 しかし陰にも弱点があります。統一・結合・含蓄というハタラキは謬(あやま)ると委縮(いしゅく)し、固定し、しまいには死滅して、結果は同じになってしまう。

 易とは無限の「中(ちゅう)

 それを何方(どちら)にも片寄らさんように、これは相待である。陰陽が相互転換性を持っているのであります。これが陰陽の理法であり、かくしてドンドン発展し、さらに進化していくのであります。この延びていくことを中(ちゅう)というのであります。弁証法でいうアウフヘーベンは「中す」と訳すれば一番よいわけであります。

 前にも申しましたように、この意味で心中という言葉はよく出来た言葉である。この世で結ばれて、新しい価値を創造することの出来ない一組の男女が、あの世へ行って結ばれ、一段と進歩するというので心で中する、誠に学問的であります。

 このように中すということは、相対的なものを相和して一段と延ばすことで、その意味では易は中の学問であります。宇宙は太極の無限の発展であり、考え方により無限の統一・含蓄、見方により無限の統一発展であるが、換言すれば、限りなき中である。天は無限の中、造化は無限の中、したがって易は無限の中であります。

 だから天・道を説く東洋の教学は、全部中庸に含まれるのである。そしてそれは永久不変のみちであるから中庸(ちゅうよう)という。庸とはツネという字で普遍性を表す。それによって初めて種々の行為が営まれ、種々の効果がある。庸はツネという字であり、モチイル、イサホシという字である。”

 “弁証法 世界や事物の変化や発展の過程を本質的に理解するための方法・法則。一般にヘーゲルやマルクスの弁証法を指す。ヘーゲルの弁証法は正(テーゼ)・反(アンチテーゼ)・合(ジンテーゼ)の三段階で説明される。すべてのものは自己のうちに矛盾を含むため、必然的に己と対立するものを生みだすが、その二つは最後にアウフヘーベン(aufheben=止揚)されるという考え方をする。”(以上、『安岡正篤 易経講座』より引用。)

 易においてこの部分が最も重要であると思う。人生を生きる上で陽も陰も必要である。男女二人が同じ屋根の下で、お互い陰陽を交互に、その役割を演じるならば、その家庭は幸せであると思う。国家においても国際関係においても同様である。

 国際関係で言えば、「陽」のみ前面に出す中国や韓国や北朝鮮は、「陰」「陽」「中庸」をわきまえている我が国とはどうしても折り合うことはできない。政治家も官僚もこのことを十分理解した上で、「それなりに」良好な外交関係を結ぶように考えて欲しい。国家としての性格が異なる国同士が政治・経済・防衛の統合を目指す東アジア共同体構想は非常に馬鹿げた構想である。

 わが国に不法入国してくる中国人らがテレビの討論会で「日本も中国もEUのようになるべきだ」と叫んだり、鳩山元首相が「この国は日本人だけのものではない」と発言したりして、日中韓を主軸とする東アジア共同体という考え方に同調する自民党の谷垣総裁や加藤氏らの思想は、この日本国の存続を危うくする非常に危険な思想である。 (続く)