2012年1月16日月曜日


『安岡正篤 易経講座』に学ぶ(終り)(20)(20120116)

 これまで20回にわたり易学講座を読みながら人生・社会・政治などのことを考えてきた。『安岡正篤 易経講座』ではこれから易学の本題に入って行くようになっている。
 この講座では八卦(はっか)のことが詳しく述べられている。そして「易とは人間科学・人生科学である」として、いろいろな卦について説明されている。

易断とは何か。私は易断とは本来物事を判断しようとするときどうしても決められないときに、まずお寺の堂内のようなしーんと静まりかえった静寂な場所で座禅し、無心状態になる。その上で自ら静かに筮竹をさばき、それで出てきた卦を読んで自ら決める。それで右か左か決めかねている自分の心が解放され、道が開ける。易断とはそのようなものであろうと思う。易者に占ってもらうようなことはあまり意味がないことだと思う。
基本的な八卦について、WORDIMEパッドにあるだけの卦の記号を引用すると以下のとおりである。

☰ この卦はあくまで活動的・行動的なものの代表、「天」を意味する。
☷ この卦はあくまで統一的・含蓄的・静止的なものの代表、「地」を意味する。
☴ この卦は「風」を意味する。
☵ この卦は「水」を意味する。
☶ この卦は「山」を意味する。

八卦の任意の二つを組み合わせると全部で64卦になる。この64卦で人生百般の問題を大別する。卦の一本一本を爻(こう)といい、全部で384爻ある。人生百般一切の問題は、64卦、384爻に照らして立派に解釈がつくという。

中国四千年の歴史の中で、いろいろな事例事象をこの卦と爻に当てはめ、64卦、つまり8卦の2乗のそれぞれに解釈の言葉(漢字の組み合わせ)を当てている。我々はその集大成を易経という学問を通じて学び取ることができるのである。

中国は1970年代に東シナ海の中国大陸棚に石油などの資源があることに目を付け、その大陸棚の先端にある奄美・沖縄・八重山そして尖閣各列島を核心的利益の対象とし、これらを時間をかけてわがものにしようとしている。

日中関係は古来国家レベルでは、日本は中国に対して尊敬と対等の意識があった。それが険悪になったのは明の時代以降である。もともと中華思想があり、今でもその意識がある中国に対して、日本は決して気を許してはならない。

そういう中国であるが、中国を支配している共産党政権(ある意味で「王朝」)は煮ても焼いても食えぬが、民間レベルでは友好的・親密的である。つまり国境を気にしない「商道」では友好的・親密的である。しかし、「政道」では敵対的である。

日本は古来中国に多くを学んで来ており、易経もその一つである。日中間は「政道」において敵対関係にあるから、日本としてはそこはしっかり「政道」を歩み、「政道」を外さぬようにしなければならない。一方で民間レベルの交流・友好親善は大いにやらなければならない。「商道」と「政道」は「陽」と「陰」の関係のようなものである。「中」こそ大事なのである。このシリーズはこれをもって終りにする。       (終り)