2009年7月5日日曜日

今は昔の性(20090705)

 小学校教諭だった男が27人もの女子児童の裸の写真を撮ってその写真をそれら児童に対する脅迫材料に用い、「ばらしたらこの写真を皆に見せるぞ」と脅し、女子児童に対する淫行の罪を重ね、懲役30年を求刑されたというニュースがあった。とんでもない野郎だ。テレビに映った件の男の写真は薄禿げ頭で、いかにもそのようなことをしそうな顔である。教職にある者としてあるまじきことをしてしまったとその男は反省しているようであるが、大人になるまでに形成された性格というものは決して変わるものではない。行動は変えることができるかもしれないが、その人が置かれた環境によってその人の性格が表に出て、同じ過ちを必ず繰り返すものである。性格は決して変わるものではないのである。

 男は一緒にそのニュースを見ていた女房に「そういう奴は似たような性犯罪を繰り返すに違いないから強制的に去勢したら良い」と言った。事実かどうかはやぶさかではないが、男は実際にどこかの国でそのような手術が行われていると聞いたことがある。少なくともGPSの装着が義務付けられていて、行動が常に監視されるようになっている国はあり、日本でも検討されていると聞いたことがある。

 去勢と言えば、昔中国では宦官といって去勢された男が皇帝に仕えていた。去勢されているから女官たちに何か色ごとをする能力はないし、皇帝が交わる女性との間にできた子を皇帝の実子であると認定することができたであろう。お茶の間テレビで人気のあった『篤姫』では、将軍と寝るときは衝立一つ隔てたすぐ隣に息をひそめている監視役がいたし、ものの本によれば同じ部屋で背中を向けて寝ている監視役がいたそうである。古代日本は中国からいろいろなことを学んだが、この宦官の制度と辮髪だけは真似しなかった。

 人の心や営みは平安時代の昔から変わるものではない。男は田舎に時々帰るが、田舎の亡父の書棚の中から今東光が著した光文社の『今昔物語入門』と言う本を見つけ、持って帰った。それを読むとつい噴き出してくるほど面白い。男はその本があまりにも面白いので、書店に行って角川ソフィア文庫の『今昔物語集 本朝世俗部上・下巻』(佐藤謙三校注)を買ってきた。この本は現代語訳がないが、読むのにさほど苦労はしない。男は平安時代のことを知るために、この本をぼつぼつ読んでゆこうと思っている。

 この本には性に関するよもやま話が書かれている。上は皇族から下は庶民にいたるまで、いろいろな話が出てくる。「今は昔云々」と始まる語り草には人の名前が実名で出てくるから上流階級の人も話題に上っており面白い。男が噴き出した話の一つは、巻第二十六の「東(あずま)の方に行く者、蕪(かぶら)をとつぎて子を生みし語」である。

 この話は要するにある男が京から東国に出張で出かけるとき女体のことを妄想し、どうにもならなくなって通り筋の大根畑に入り、蕪を一つ引っこ抜いて刀で穴を開け、その穴に致した後その畑の中にぽいと捨てたのであるが、後日その畑の持主の娘がそれを拾って食べたらお腹が大きくなり赤子が出来てしまった。心当たりが全くないのに起きたことなので仕方なしに育てていたら、件の男、その畑のわきを通りすぎるとき従者にかつて自分がどうしようもなくて致したことを話しているのを娘の親が聞いていてはたと思い付き、娘にできた子の父親が認知され、めでたしめでたしとなったという話である。