2009年7月6日月曜日

毎日が日曜日の音楽(20090706)

 男は全盲のピアニスト辻井さんが弾くショパンの子守唄を大型のフラットテレビで観賞した。とても素晴らしく、感動した。男は中学校時代の担任の先生が音楽の先生であったこともあって音楽には関心がある。関心があるといってもクラシックの演奏会を聴きに行くとか自分で楽器を奏でるとか、自宅に高音質の音楽再生装置を持っているとか、某タレントのようにパソコンで作曲するとか言ったほど関心が深いわけではない。そういう意味では「関心がある」と言う言葉を発するほどでもない。しかし、もし中学校時代から音楽に親しんでいた、男はもっと情操豊かな性格になっていたかもしれないな、とは思う。

 男はベートーベンとかモーツアルトとかショパンとかチャイコフスキーとかの音楽のCDを持っていて、気まぐれにときたまヘッドセットで聴いたりする。いつかは自分もパソコンで音楽を作曲してみようと思って音楽の基礎知識を勉強しておこうと何冊かの本も買って書棚にしまいこんだままになっている。男はやる気であればそんなに時間をかけなくても音楽の一つや二つ作曲はできると思っている。いや、いつかはやってやろうと思っている。男の部屋には子供用のシンセサイザーの演奏器がある。指を動かせば幼稚ではあるが何とか曲を弾ける。ハーモニカも何本か音程ごと違うものを持っていて、童謡唱歌などある程度の曲目は歌の伴奏ができる。女房は「お父さんならできるよ」と言う。

 男はNHK交響楽団の演奏会とか、生の演奏をまだ聴きに行ったことがない。現役のころ勤めていた会社からチケットをもらって、来日した、多分キエフだったと思う、バレーを女房と一緒に観に行ったことがある。チャイコフスキーの『白鳥の湖』などが上演されていて、踊り子たちが一列に並んで幕内から出てくる情景が深く印象に残っている。現役のころはオペラとか歌舞伎とか大相撲とか、ある意味ではちょっとハイクラスの経験をしたが、それぞれ一度きりで十分で、それ以上の関心はない。

 音楽に関してはまだ一度も生演奏を鑑賞したことがないので、一度チケットを入手して女房と一緒に行ってみたいという気持ちはある。男にKという同年の女友達がいて、Kから「一度生の演奏を聴きに行くべきだ」と言われたことがある。Kは男と中学時代から郡内の弁論大会に出て男が優勝、Kが準優勝、男が生徒会長、Kが副会長という具合に深い縁があった。そのKは東京芸大の大学院を出て音楽の道に進んだ。音楽の道に進んだといっても合唱団の指揮者としてである。Kは団員を連れて海外にも行ったことがある。男は一度都内近郊に住んでいる同級生と一緒にKの演奏会を観にいったことがある。その後何度か演奏会の案内があったが、男はなにかと理由を付けて行っていない。毎日が日曜日になった今、もう白髪も多くなっているかもしれないKに会って、Kがまだ指揮者をしているならその演奏会を、同級生たちを誘って、応援かたがた観にいってやろうと思っている。

 男はいろいろ多趣味で、あれもしたいこれもしたいと思ったことがあった。水彩画も2、3枚描いた。俳句もやった。ガッシュの絵の具や歳時記やHowToの本なども購入した。しかしどれもこれもちょっと端っこかじった程度である。打ち込むほど魅力を感じていないのである。あれもこれもしたくても、あれもこれも出来るほどの時間がない。そうこうしているうちに晩年となり、この世におさらばとなる。男は缶ビールの残りを一気に飲んだ。