2009年7月18日土曜日

食の安全(20090718)

 夏の季節は麦茶が良い。先般「ためしてがってん」という番組でティーパック入りの麦茶をおいしくする技術が紹介されていたので、男は早速麦茶とエンハンス効果を期待して、試しに小さな瓶入りのインスタントコーヒーを買って来た。

 麦茶には「六条大麦」と書いてあったので、男はてっきりそれが国産であると思い込んでいた。女房が「ためしてがってん」で紹介されていたとおりに麦茶を作った。手順は初めにティーパックに湯をかけてむらし、その後麦茶を煮出し、1時間おいてインスタントコーヒーを一つまみ加え、冷蔵庫で冷やす。このように手間をかけた後に頂くのである。

 気のせいか確かに麦茶の香ばしさと味が出ていた。男は子供のころ祖母が作ってくれていた麦茶のことを思い出していた。男が子供のころは農家であったので何でも自給自足であった。茶は集落の女性たちが集まってまわり持ちでそれぞれの家の茶を摘み、揉んで炒っていた。農作業の休憩のとき、茶は「おこうこ」と呼んでいた沢庵を添えて飲んでいた。その沢庵も自家で作ったものである。味噌も醤油も自家製であった。蕎麦は祖母が石臼で挽き、ふるいにかけて粉を取り、それをこねて作っていた。混じり気なしの純正な蕎麦であった。家の周りには季節ごとに果物がなる木があり、みかん、柿、すもも、ざくろ、びわなど食べたいときにもぎ取って食べていた。肉桂の根っこを掘り出して洗ってしゃぶったり、自生のいちごを採って食べたりしていた。

 鶏小屋には卵が二つ、三つあり、餌をやったあとそれを取り出し、水路にはどじょう、なまず、うなぎなど生息していて、子供のころそれを獲って帰り、タンパク質を補っていた。家の入口の土間に大きなブリキの缶が設置されていて、その中に玄米が蓄えられていたが、搗いた米がなくなるとてこの原理で一方を足で踏めば先の石臼の中に入っている玄米の上からドスンと杵が落ちる仕組みの精米道具で時間をかけて精米していた。それは子供の仕事であった。子供は横にかけてあるワイヤに通したそろばん玉を一つずつ送って数を数えながら、玄米を精製して白米にしていた。その米も当時農薬などなく、結構害虫の被害はあったが、いなごは手で捕まえ空の一升瓶の中に詰め込み、持ち帰ってあられを炒る網の容器に入れて火にかけると緑色のいなごがえびのように赤く焼け、食べられるようになる。虫送りという行事があって、夜たいまつを持った子供たちが田んぼの周りを廻り、害虫を燃える火の中に誘って駆除していた。

 そのような自給自足的な生活を子供時代送っていたから、男は「六条大麦」と書かれていた麦茶が、まさか中国製である思ってもみなかったので急にその麦茶に嫌気がさした。それが中国製であると気づいたのは女房である、男は女房から「安いから買ったのでしょう」と非難されたが、男はその商品を買うとき裏面まで見ずに買ってきたのである。
その麦茶は株式会社Mという都内の会社が中国から輸入していたものを、大手のスーパーが仕入れ、店頭に並べていたのである。何の表示もないからその製品について残留農薬の検査は行われていないようである。しかも、Mという会社もあやしい。株式会社というがどうも社屋もない個人的な会社のようである。大手スーパーともあろうものが、購買担当者が大学の同期同窓のよしみか、巷の飲み屋で意気投合した男同志の話で決めたものなのか知らないが、それを仕入れ食の安全に関して一切触れず、顧客を騙すようにして売っている。男はこの商品の安全性について徹底的に調べ、追及してやろうと思った。