2009年7月1日水曜日


人生の冬は花盛り(20090701)

テレビで101歳の元気なおばあちゃんのことが紹介された。そのおばあちゃんは元教師で14年前にご主人を亡くし、現在ある特別養護老人ホームで暮らしている。そのおばあちゃんのことを仮にAさんと言っておこう。Aさんはそのホームで余生を非常に生き生きと暮らしている。というのはAさんは和紙にクレヨンで絵を描いているのである。絵だけではなく、その絵に大変達筆でご自分が作った俳句も書き添えているのである。
ある日そのAさんと以前付き合っていたこれも高齢のご婦人が自分の家の庭に咲いていた白い梅の花の枝をもって見舞いに訪れた。Aさんはその梅の花を題材に絵を描いた。絵は何日かかけて完成した。Aさんが描いた絵の梅の花は桃色の花になっていて、ご自分が若かったころの風景が挿入され、ご自分が作った俳句が流麗なくずし字で書き添えられていた。その風景には着物姿の若い女性たちが描かれていた。
Aさんは一枚の絵の中に自分を表現することができてとても楽しい、という。101歳になってもなお毎日生き生きと生きる姿に男は感動した。男もAさんのように生き生きと精神活動し、最期まで命をいと惜しみ、周りの人たちに生きる喜びを与えながら生きたいと思う。何かを表現をして人々に感動してもらうという行為は、いくらそのようにしたくてもすぐできることでもなく、また誰にでも出来ることでもないと男は思う。それには何か基本的な素質が必要である。その第一は自ら物事に感動することができる感性である。美しいものを美しいと感じ、自分のものとしてそれを表現することができる能力であると思う。
男は自分自身を省みてそのような素質には欠けていると思う。男は行動派で、何か感傷に浸るような女々しいことは嫌いである。物事は竹を割ったようにスパッと切れて、後を引かないように処理されるべきであると日ごろ思っている。それに根気よくこまごまと作業を続けることは性に合わないと思っている。それでも男はAさんのようにクレヨンや絵の具など持っていて、絵も近くの川と橋を題材に何枚か描き同好会の展覧会に出展したことも何度かある。男の部屋にはその時の絵が一枚掛けてある。男はAさんのように絵を描きたいと思わないこともない。しかし、男はその時間を惜しんでパソコンと遊んでいる。
男は生きている間にやり遂げたいことは、男の遠い先祖のことを家伝書として完成させること、そしてその家伝書に書いたことを題材に小説を書いて遺すことである。家伝書の草稿はほぼ完成している。男の亡父が遺してくれていた1000年前の系図をもとに、いろいろ調査して、想像も加えて肉付けしたらA4判で100ページほどの分量になった。
小説を書くことについては構想を練っている段階である。参考にする本は、第8次遣唐使船に乗って留学生として唐に渡り、科挙の試験に合格して玄宗皇帝に仕え、出世し、日本に帰国しようとして乗った船が難破して結局帰国を果たせなかった阿部仲麻呂のことを書いた小説や、孔子のことを書いた小説、源氏物語の時代のことを書いた本や『大鏡』『今昔物語』などである。素人が遊び心で書く本であるから、一般の人には笑止ものである。
男はAさんのように一般の人々に感動を与えるような芸術活動は時間もないし、熱心になれない。時間は誰にも平等であるから、自分が熱心になれる意義あることに集中的に使えばよいと男は思っている。それが良い人生であると男は思っている。

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