2009年7月27日月曜日

便利な都会暮らしと先祖の祭祀(20090727)

 男が住んでいるマンションは7階建て28戸、駐車場13台分の小さなマンションである。T川に面していて川の堤防の上を歩く人からこのマンションの駐輪・駐車場を覗き込むことができる。男と女房はこのマンションの7階の東側に面した4LDKに住んでいる。3方に窓があって、朝から夕方まで陽が入り込む。窓を開けておくと涼しい風が吹き込み、風鈴を鳴らしている。エレベーターは各階どまりなので、年寄りが住むには良い。近くに大型スーパーなどあり、道路もあるので多少騒音があるがあまり気にはならない。

 このマンションに4基の防犯カメラが取り付けられた。その理由はこの20数年の間にバイクが盗まれたり、壊されたり、自転車の輪だけを外して持って行かれたり、下着ドロボーが2階に家族と一緒に住んでいる女性の下着を盗もうとしたり、何カ月も不法に400㏄のバイクを置いておかれたり、夜ごみ置き場の中にホームレスの若い男が寝ていたり、屋上に不審者が登ったり、女性が不審な男にエレベータの中まで付いて来られたり、駐車場への入口に早朝犬の散歩者が犬の糞の後始末をしないまま放置したりしたからである。防犯カメラの設置費用は30万円ほどかかったが、維持費は住民1戸あたり800円ほどである。このマンションの住民の高齢化が進む中、安心のため皆同意して設置されたのである。

 防犯カメラは最新式のもので、夜間でも昼間のようによく映る高感度カメラが使われている。コンピュータは2年に一度無料で交換される。プライバシーにも配慮して装置の操作は規則を決めて誰でも勝手に録画されたものを見ることができないようになっている。エレベーター・電気・給水の異常などは、ある警備会社との契約で自働警備されている。

 男は田舎に自分の家があるが、当分の間、田舎には時々帰るのが良いと思っている。男の家がある田舎は人口僅か18千人の小さな町ではあるが、大変住みやすい町である。男も女房もまだ元気でどこへでも出かけて行けるが、そのうち必ず弱って来る。その時何処に住むかが男と女房の気になっているところである。

 上を見ればきりがないが、男と女房にとって、このマンションでの暮らしは大変快適である。バスも始発、タクシーもコンピュータに男の名前が登録されていて呼べばすぐ来てくれるし、早朝の予約も確実で信頼感がある。空港や新幹線の駅へのアクセスも非常に便利である。住民お互いよく知りあっていて、男が「貧乏長屋」と冗談を言うほど和やかである。このマンションには光ケーブルが入っていて、100bpsの高速通信ができる。

 このマンションが水辺に建っているということは、とても良い。男と女房は毎晩川の堤防の上を一回りするスロージョギングをして健康維持に努めているが、ジョギング中夜景を楽しんだり、川面にボラの跳ねるのを見たり、雨上がりの時などは水たまりでカエルの鳴き声を聞いたりする。こんな良い環境はなかなかないと思う。

 女房は「私かお父さんかどちらかが先に死んだら、残った方は老人ホームにゆくことにしよう」という。男はその考え方に賛成である。田舎には男の親父や母親の墓がある。墓を守るためどうするか、860年前男の先祖が平安京から下ってきて住んだ土地に先祖を祀る何かある形を造らなければならないと男は思う。この点に関して女房はどうでもよいと思っている。女は先祖のことには昔から関心がない存在である。

 男の息子たちは大阪に住んでおり、連絡し合っている。男は先祖を祀ることに関して一度息子たちと話し合わなければならないと思っている。