2010年3月30日火曜日

ブッダ『感興のことば』を学ぶ(10) (20100330)

 NHKスペシャル人体製造の衝撃という番組を観て考えさせられた。ヒトの幹細胞で何でもできるのだ。豚に移植して人間の肝臓を作ることも、女の幹細胞から精子を創ることも、免疫の型が全く同じ兄弟姉妹を創ることも、である。

 イギリスでは議論の末、200811月に‘救世主兄弟’という免疫の型が全く同じ兄弟(姉妹)を厳しい条件付きで創ることを認める法律が作られたという。その条件とは、救世主兄弟が提供するものは血液の病気の治療に限るというものである。アメリカではそのような法律はなく、両親と医師の間の話し合いで決定することが奨励されている。日本では会議はよく開かれるが議論がなされていない状況であるという。これは、アメリカ人の半数はDRD4遺伝子の繰り返し頻度が7回の人であるのに対し、日本人では4回の人が殆どであるということがそのような状況を作り出しているのだろうか?7回の人は新しもの好きな性格で、4回の人は内気であるという。日本人は「和を以って尊しと為す」国民なのだ。

 日本では国際的に厳格な基準で認められている施設で、豚に人間の肝臓を創らせる研究が行われ、種の異なるマウスとラットの間で実験が成功している。つまりマウスにラットの肝臓を創らせることに成功したのである。人体改造で若返りも可能になる。

 救世主兄弟は、受精卵が分裂を始めて8個になったときその中の1個を取り出して免疫の型を調べ、一致したものを母体に入れて免疫の型が全く同じ子供が創られとき、その子供のことをそう呼ぶ。アメリカではケイティという女の子が、救世主兄弟で弟・クリストファーの骨髄で病気を治療し、成功している。受精卵の分裂が8個になったとき、そのうちの1個を取り出しても、残りの7個で分裂が進み、胎児として成長するということである。クリストファーは、父親である夫の精子と母親である妻の卵子を体外受精させ、受精した23個の卵を次々調べ、ケイティと免疫の型が全く同じ受精卵を見つけ出して、妻の子宮内に着床させ、生れた男の子の名前である。極端に言えばクリストファーは人造人間である。

 アメリカではマーク・ヒューズ医師は103の救世主兄弟を創ることに成功しているという。またザボス医師は中東のある国で認められているクローン人間創りを試みているという。救世主兄弟は、兄弟(姉妹)が重い病気になったとき、例えば腎臓の2分の1、肝臓の半分、骨髄、皮膚などを提供する役割を担わされるべく、この世に生を受ける存在である。将来、自分が病気になったときのために、若い時に自分の幹細胞を保存しておけば、自分の寿命を延ばせることも、若返ることも可能になるらしい。その費用は150万円であるという。

 人体製造の技術は驚異的である。今後ますます発達するであろう。製造される人体と仏教の哲理とは対立するものでるのか、そうでないのか?私の哲学の思索の新たな課題が出て来たと思う。クリストファーの両親はケイティの命を救った。しかし本当に救うことが出来ているのだろうか?よくよく突き詰めて考えれば、答えは‘否’である。

40 子も救うことができない。父も親戚もまた救うことができない。死におそわれた者にとっては、かれらも救済者とはならない。