2010年5月16日日曜日

ブッダ『感興のことば』を学ぶ(57) (20100516)

 Newton『知りたい!遺伝のしくみ』にインターネット版のヒト遺伝子カタログOMIMの検索のことが書かれている。検索の仕方によるが初め出てきたのはどうもプロフィールがはっきりしない人で、ひょっとすると分子生物学者かもしれないしそうでないかもしれない人のブログがでてきた。あるいは、検索に「・・・しなさい」と命令調で書かれているブログもあった。どうもおかしいので検索し直したら純粋に学術的なデータベースのページが出てきた。私が探していたのはこの学術的なデータベースである。しかし、私はそのようなものがあることだけを確認したかったので探してみたのである。

 しかし分子生物学を学び、あるいはその分野に興味をもっている若い人たちがインターネットでヒトの遺伝子のカタログのデータを探した時、その人が何か精神的なものを求めていた場合、初めに書いたようなブログがすぐ目にとまるだろう。それらのブログはそれほど注目を引きそうによくデザインされている。

 最新の科学は人々の精神を不安にさせる可能性がある。生まれながらにして何か病気をもっていたり、身体的な障害があったり、性格が悪かったりした場合、それは遺伝子によるものである。生まれながらにして美男子、美女、高い知能、善い性格であるのも遺伝子によるものである。勿論、ヒトの遺伝子は極めて複雑にできているようであるから、「氏より育ち」というように生後の環境が影響するところが極めて大きいことは間違いない。分子生物学者たちはそのことを大いに強調するようである。

 DNAのメチル化といってDNAの塩基であるシトシンにメチル基という化学構造が付け加えられた遺伝子は働かなくなるそうである。それがなぜ起きるかは解明されていない。生後の環境でそのスイッチが入ったり入らなかったりするのであろうか?

 今の時代、最新の科学的情報は広く一般庶民にも知れ渡る。特に欧米や日本など高度情報社会ではそうである。そのような社会では人々の精神的な安定を図る何かの社会的構造が必要である。アメリカでは頑固にヒトは神様が創造したと信じ、あるいはかたくなに信じようとする人々がいる。ヨーロッパでもキリスト教という宗教が人々の精神を支えている。しかし八百万の神々がましますわが国、葬式仏教が盛んなわが国、結婚式の格好よさを好みキリスト教式の挙式に憧れる若者たちが多いわが国にはそのような構造はない。勿論欧米でも徐々に古い伝統的な構造はなくなってゆくであろう。

 分子生物学が遠い将来人々の精神を安定させる技術を生み出せば宗教も必要でなくなるのかもしれない。しかし「あの世」「神の国」の存在は人類にとってまだまだ十分必要である。お釈迦さまもイエスキリストもそれらの存在を人々に説かれたのでそれは確かに存在するのであろう。そして分子生物学も量子力学もそのことをどうしても証明することができないのであろう。しかしまだまだ未知のことばかりである。

6 うるわしく、あでやかに咲く花で、香りの無いものがあるように、善く説かれたことばでもそれを実行しない人には実りがない。