2010年5月23日日曜日

ブッダ『感興のことば』を学ぶ(64) (20100523)


 NHKで全盲のピアニスト・辻井伸行さんのLive出演の番組があったのでずっと視聴した。彼は音楽家の血を引いていない。彼のお父様は産婦人科医でありお母様は元アナウンサーである。彼は生まれつき視覚障害者であった。彼が2歳のとき買い与えたおもちゃのピアノを弾く様子をお母様が見て「この子は音楽家の素質がある」と判断されたということである。7歳の時、全日本盲学生音楽コンクール器楽部門ピアノの部で第1位受賞し、以後生まれつきの才能をぐんぐん伸ばし続けて現在に至っている。

 番組で辻井さんは自ら点字で作成した1通の手紙を読み上げた。その手紙は小学校以来会っていない小学校1年生のときの恩師・大倉繫之先生に宛てた感謝の手紙であった。辻井さんには内緒であったがその恩師・大倉先生から辻井さんあての手紙がその番組に届けられていた。それをアナウンサーが代読した。辻井さんは大変感激していた。

 辻井さんは昨年6月、アメリカで開催されたヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝した。番組ではそのコンクールのリハーサルの様子が放映された。オーケストラの指揮により辻井さんがピアノの演奏を開始しオーケストラの伴奏が続くのであるが、辻井さんは指揮者のタクトを振り下ろす息づかいを感じ取りピアノの演奏を始めたという。

 番組では辻井さんがショパンのノクターンなど幾つかの曲目を演奏した。スタジオの中で見ている観客たちも感動していたが、こうして遠隔地でテレビを見ている私も感動した。目が全く見えなくても持って生まれた才能を全開させて人々に歓びを与えている。これがブッダの‘方便’でなくて何だろう?

 辻井さんの遠いご先祖に音楽に特別優れた方がいらっしゃるのだろうと思う。何世代、何十世代を経るうちに血は混じりあい、重なりあうのであるが、そういう中で遠いご先祖のあるお方の‘来世’が辻井さんの‘現世’として存在しているのだと思う。

 昨夜は夜中1時過ぎせき込んで目が覚めせきが止まらなかったので居間でテレビを見た。たまたまそれはマザーテレサのことをドキュメンタリーにした映像であった。マザーテレサやマザーテレサのもとに集まった修道女たちの活動をみて、神への強い信仰心が何事も恐れない愛の活動の力となっていると思った。男にはなかなかできないことだと思った。マザーテレサや彼女のもとに集まった修道女たちは、やはりブッダの‘方便’として、それぞれの‘現世’は、それぞれ誰かの、それぞれ何代、何世代、何十世代も前の世・‘前世’の続きであるのだと思った。全てをイエスキリストに捧げた行為は、その‘前世’の遺伝子が為させるものであるのだろうと思った。

 そのような‘前世’の遺伝子の情報は、電子顕微鏡を使って肉眼で観測できる物質としての遺伝子によるものだけではなく、物理学的な‘波動’のようなものを通じても伝えられるのかもしれない。ただこの部分はまだ科学的には全く未知である。

12 色かたちによって、わたしを測り、また音声によって、わたしを尋ねもとめる人々は、貪欲や情欲に支配されているのであって、実はわたくしのことを知らない。