2011年8月2日火曜日

日露戦争前哨戦(補記) (20110802)

 ここに一冊の本がある。「『文芸春秋』12月臨時増刊号『坂の上の雲』と司馬遼太郎」という本である。その本に「司馬遼太郎『坂の上の雲』を語る」というタイトルの記事があり、その中に「日本人が褒められすぎた日露戦争」という見出しがある。その中に、次の一節がある。(“”で示す。)

 “昭和の初年に、横浜から英国に帰ろうとした女性がいた。女性の外交評論家で世界的に知られていて、日本に何年か住み、日本のことをよく知っていた人です。当時の政界人とは非常に親しかったらしく、横浜を去るにあたって政界の人たちが集まっています。

 牧野伸顕という人が音頭をとっていますね。牧野伸顕は明治維新のときの大久保利通の子供です。そのときの様子を、牧野伸顕は何かに、書いています。横浜のホテルでその女性評論家にごちそうをして、仲のよかった日本人、十人ばかりで小さな送別会をした。そのときに、彼女は非常に冷静な表情でこう言いました。

 「日本はやがて滅びるでしょう」昭和の初期の話です。・・(中略)・・「なぜかと言えば、日本の陸軍の軍人は天下の秀才を集めている。彼らが非常に秀才であることは認めるけれど、彼らは常識というものを知らない」

 ここで彼女の言う「常識」とは、われわれが現在使っている「常識」の意味ではありません。ちょっと説明の要る「常識」なんです。・・(中略)・・ヨーロッパ人ならば自然と持っているある種の常識が、日本人は地理的環境のために欠けていると言う。・・(中略)・・

 当時、アルフレッド・マハンというアイルランド系のアメリカ人がひとつの評論を残しています。・・(中略)・・そのマハンが、日露戦争が終り、五年ぐらいたって書いた論評があり、こんなことが書かれていました。「(前略)・・日本の軍人は他国の軍人のおよぶべからざる多くの長所を持っている。そのために、日露戦争から普遍的な教訓を引き出すことを怠っている」ましてや、日本人は怠っている。・・(後略)”

 私は、日露戦争から学ぶべき普遍的な教訓は、次の二つにあると思います。

 一つは、日本は「武士道」という、日本人自身が自ら気が付かない世界に類例のない精神が根付いていたということです。その「武士道」精神は一時どこかに忘れ去っていましたが、未曾有の大震災を経験した今、また蘇りつつあると思います。日本は幕末から明治時代、この「武士道」精神で東アジアでいち早く開国・近代化し、降りかかる火の粉を払いのけるため武士自らその身分を捨て、天皇を中心にした日本民族として、兵は兵、民は民と、それぞれその役割を自覚し、それを完全に果たしたということです。

 二つは、日本にはそのような香り高い、美しい精神があり、「茶道」などに見られる「道」の精神がありますが、中国、ロシア、北朝鮮などにはそのような精神はない。それらの国々の指導層の人たちが共有しているのは、「動物」的な「生存」の欲望です。誤った歴史観を国民に植え付け、「反日」感情を煽り、煽らないまでも放任し、日本人の心を傷つけている。

 同じ「自存」でも、日本と中国などの「自存」とは意味・内容が違っている。(続く)

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