2011年8月3日水曜日

日露戦争前哨戦(補記) (20110803)

その本で司馬遼太郎はこう言っている。

“「今後、中国、韓国がどうなっていくかわかりません。わかりませんが、毛細管現象というものがありますね。たらいに水を張っておき、ガラスの管をいれると水が上がっていく。日本や韓国は新しい技術が入れば、水が上がって、技術が広まっていきます。しかし、中国は海のように広い。なかなか水が上がらない。・・(中略)・・

 しかし、国を保っていかなくてはなりません。ヨーロッパより広いところを、方言が非常にまちまちな所を、一国で保っていかなければならない。本来は不可能なことなんです。歴代王朝が二、三百年で腐敗して倒れていくのも当然なことであり、ひとつの国としてまとめるには中国は難しい。その難しさを、日本も韓国もわかってやらなくてはならない。”

 中国は、広大な土地に国民の大部分を占める漢族を中心に、漢語派の回族、朝鮮語派の朝鮮族、ツングース語派の満洲族、トン・タイ語派のチワン族、チュルク語派のウイグル族、モンゴル語派のモンゴル族、チベット・ビルマ語派のチベット族・イ族等、54の少数民族がいる多民族国家である。

 広大な中国の土地には私有地は存在せず、全部国の所有であり、その代わりに土地の使用権が認められている。人口移動は自由でなく、農民が都会に戸籍を移すことはできない。多民族をまとめるため、少数民族に対する漢語の強制と弾圧が行われている。中国共産党が一党だけで、長期的国家戦略に基づき全人民の代表者が国家を運営している。国家主席は今の中国の「王」であり、首相はその「王朝」の「宰相」である。言わば1644年から1912年まで続いた「清王朝」に替わり「共産党王朝」が今まさに盛んな時代である。

 その「共産党王朝」は、歴代王朝と変わらず「中華思想」をもって自国の安寧・繁栄を目指している。日中間の経済交流・文化交流は情報・通信・交通の高度化に伴いますます盛んになり、遠い将来には日中両国民間の心の壁は低くなるだろうが、その過程においてわが日本が中国に領土を侵略されぬよう、十分な用心が必要である。日本の指導者層の人たちは、今の時代の「武士」である。しっかりと「武士道」精神をもって、かつ、欧米人のセンスでいうとことの「常識」をもって、国難に対処してもらいたいと思う。

 このブログのサブタイトル「日露戦争前哨戦」はこれで終わりとし、最後に、自沈したワリヤーグ号のその後について触れる。最後に秋山氏の論文を引用する。

 “日本海軍はワリヤーグ号浮揚せしめて整備再生することを決めた。沈没の僅か一ヶ月後、ワリヤーグ号の引き揚げ作業は開始された。非常な難工事の結果、浮揚したワリヤーグ号は戦利艦とし1905年(明治38年)822日付けで帝国海軍に編麀され、「宗谷」と命名された。そして、艦首の露国海軍の飾りは外され、金色に輝く「菊の御紋章」が取り付けられた。横須賀工廠第二船梁にて本格的復旧工事が施され、「宗谷」は「阿蘇」(旧露国巡洋艦バヤーン号77726トン、戦利艦)と共に、練習艦隊を編成して士官候補生の遠洋航海訓練に使用された。“                        (終り)

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