2011年8月14日日曜日

福島第一原発事故を考える(続き) (20110814)
 野生動物でも自分の身に危険が迫っていることを察知すると、より安全な方向に逃げる。これは野生動物に自ずと備わっている「自存」力によるものである。人間でも同じように自分の身を守るための行動をする。行動の方向は「情報」によって選択される。
 生物なのか非生物なのかはっきりしないウイルスでさえ、「自存」のため一定の行動をしていると思われる。ウイルスは増殖できる環境に入り込むと途端に増殖を始める。それまではじっとしている。何がそうさせるのか?それは生物化学の分野の研究対象であろう。人も動物も「情報」を察知したら、自分が「快感」を得られる方向に行動する。逆に「不快」になる方向からは逃げる。何が「快」で何が「不快」なのかの選択は究極的に細胞の分子レベルで行われる。これは化学の世界で行われていることである。
 危険な作業を外国人労働者を雇って行ったり、必要な点検作業を会社の利潤追求、ひいては役員の報酬・従業員の処遇等のためおろそかにしたり、人命を最優先するため必要な原子炉の冷却よりも、廃炉による損失を重要視した東電役員の姿勢も、みな、それぞれの「自存」の行動であった。しかしそこに間違った「自存」力が働いている。それは、「他人のことはどうでもよい、自分さえよければそれでよい」という利己心である。
 そのような利己心に気付こうとしないから、原発周辺の住民に対する「情報」の提供が全く不十分であった。動物なら自ら察知する「情報」が、住民に対してはコントロールされたものになっていた。そればかりではない。政府は「住民の混乱を避けるため」であったとされるが、間違った「情報」を住民に提供した。そこに菅首相はじめ枝野官房長官ら政府高官の利己的な「自存」力が働いていなかったか?つまり「政権を守る」とか「この際政権浮揚に利用しよう」とかいった思惑は全く無かったか?原発事故調査・検証委員会は、そういった人間の心理状況まで踏み込んだ調査を行い、全国民の前に明らかにし、将来の教訓として考査結果を活かすようにして貰いたいと思う。前述の本に;
 “福島県の楢葉町役場では十二日の朝から「南に向かって下さい」と防災無線でアナウンスし続けたが、七十代の女性はこう言う。「南に向かってくれと言われても、何のことか、わからんのさ。じいちゃんは足が悪くて、脳梗塞を患っているし、私ら年寄りにはよくわからん。・・(後略)・・」”
 “原発より北側では、「北に避難して下さい」との指示が流れた地域もある。避難所の住民に話を聞くと「役場に聞いても『全然分からないんです』というばかり」という。”
 “「米政府は軍事衛星の角度を福島原発に向けて、リモートセンシング(観測)し始め、また無人偵察機で上空高硬度から撮影も始めました。その結果、原発内は予想以上に悲惨案状態だと認識したのです」(米FEMA「連邦緊急事態管理庁」外郭団体管理官唐川氏)”
 “「一号機の水素爆発が起こる前、米政府は青森県三沢基地にDARTと呼ばれる七十人の部隊の配備を命じています。・(中略)・二十人の科学者と五十人の実働部隊で構成され、・(中略)・急速冷却装置などを使って水素爆発を止める用意をしていました。・(後略)・」”