2011年8月5日金曜日

野犬たちの行動に学ぶものがある(20110805)

 NHKで「ダーウインが来た」という番組がある。その番組で『野犬ドール』というタイトルのものがあった。「ドール」とは、インドの森にすむ野犬の一般名称である。
 インドの森にはドールのほか虎や鹿も棲んでいる。ドールも虎も鹿がその食料になっている。ドールも虎もそれぞれ自分の行動圏を持っていて、ドールの行動圏と虎の行動圏は隣接している。両者の行動圏は鹿もやってくちょっと小さな湖に接しており、ドールは追われてその湖に飛び込んだ鹿をチームワークで捉え、のど元を締めて息の根を止め、陸に引き揚げて一族のもとに運んでゆき、一族皆で食べている。

 虎は湖が苦手であるから、陸地で鹿を捉えている。鹿は虎の行動圏に入らなければその湖にゆくことは出来ないから、虎は鹿のそのような行動を知っていて、姿勢を低くし、鹿の隙を狙って突進し、鹿を倒している。

 ドールの社会は母系家族である。放映された番組では、観察者が「ケナイ」と名付けた母鹿がリーダーである。その母鹿の連れ合いの雄鹿は家族を守り、食料を調達する役目よりも、交尾期がきている雌の鹿と交尾して子孫を増やす役割を担っている。勿論、群れの雄たちの中で一番強い雄だけがリーダーであるケナイと交尾することができる。

 ある日、その連れ合いが虎と戦い殺されてしまった。そのとき群れのリーダーであった母鹿ケナイがどこかに消えて居なくなってしまった。その間群れの幼い子たちを世話しながら群れを統率していたのは一番年長の2匹の雄であった。その2匹は勿論ケナイの子供である。リーダーが居なくなっても群れの統制は保たれていた。

 ある日、ケナイが2匹の大人の雄を連れて群れに戻って来た。それまで群れを統率し、幼い弟妹達に食事を与えていた2匹の兄弟はじめ群れのものたちは、母親であり、リーダーであるケナイが連れてきた雄を警戒し、近づこうとしなかった。ケナイが連れてきた2匹の雄は兄弟であった。この2匹のランクが上の兄は観察者によって「マッチャ」と名付けられた。マッチャたちはケナイの子供である二人の雄兄弟を群れから追い出しにかかった。そのとき群れのリーダーであるケナイは、マッチャたちの行動を制さなかった。それが野生の掟である。ケナイが居ない間群れを統率・世話していた兄弟は群れから離れた。

 ケナイは妊娠した。ケナイの娘も妊娠した。ケナイを孕ませたのはマッチャであることは間違いないが、ケナイの娘を孕ませたのはマッチャなのかマッチャの弟なのかはわからない。野生犬ドールは群れを大きくすることによって種の存続、つまり「自存」を図っている。群れが大きくなると隣接する虎の行動圏に侵入し、行動圏を広めようとした。虎は当然侵入者を追い払う行動に出た。しかしケナイは頭が良い。チームワークを良くして図体の大きな凶暴な虎に立ち向かい、遂に虎を追い払った。ドールの行動圏が広がった。虎は自らの「自存」のため小柄なドールを威嚇し、追い出しにかかった。ドールも自らの「自存」のため、チームワークで虎が逃げ出さざるを得ないようにした。

 国家同士も動物たちの「自存」と似たような行動をする。その「精神」は別として。