2011年12月28日水曜日

『安岡正篤 易経講座』に学ぶ(1)(20111228)

 昭和33年、安岡正篤氏60歳のとき、多くの熱望に応えて語った待望の「易経」講話録、『安岡正篤 易経講座』を括弧(“”)で引用しながら学んで行くことにする。この本は、致知出版社から平成20年の第一刷が発行されている。老人は平成21年に発行された第二刷を昨日横浜の有鱗堂で購入し所有している。

 “易は面白いことに、日本では現代一般知識階級には最早(もはや)とんでもない古典的非科学的学問のように考えられているのですが戦後西洋では真剣に採り入れられて、しかもそれは自然科学、精神科学の方面から研究され、やがてそれが次第に哲学方面からも注意されるようになり、日本よりも却(かえ)って真摯(しんし)に追及されるようになったということであります。・・(中略)・・

 前にも申し上げましたトインビー教授はその歴史研究に於(お)いて、易の陰陽の原理を採り入れて新機軸を出したことを自ら告白しております。

 教授は過去の幾つかの歴史の興亡の後を調べて、それまでは識者に人類文明の歴史は暗いものである。没落史である。要するに西洋文明は黄昏(たそがれ)の状態にあると言われているけれども、教授に至っては、多くの点でこれに同調しつつ必ずしも黄昏ではない。人類の叡智(えいち)によればこの危機に打ち克つことが出来るという一条の活路を見出した。これが教授の新機軸であります。

 そしてその希望の曙光(しょこう)をもたらした所以(ゆえん)は、東洋の易哲学に負うところが多いのであります。”

 “*トインビー教授(Arnold Joseph Toynbee)、イギリスの歴史家(一八八九~一九七五)。主著『歴史の研究』で西欧の没落という危機意識を通じて現代世界を展望する独自の文明史観を展開。ほかに『試練に立つ文明』『世界と西欧』などがある。易の思想と通ずる日本神道にも注目して来日、晩年『日本の活路』を著し、「日本人が古神道を護持する限り、常に世界の先頭に立つであろう」と警告を発している。”

 老人はトインビーのこの言葉にはたと膝を叩いた。古神道は正に日本人の「体外遺伝子」の構造を規定する重要因子である。一方「体内遺伝子」はDNAそのものである。それは親から受け継いだものである。これは言うなればハードウエアのようなものである。
これに対して「体外遺伝子」とは、精神文化、伝統、風習、伝承されるもの、紙やハードディスクやCDなどのメディアに記録されたものであり、言うなればソフトウエアのようなものである。日本人個々がそのような「体内遺伝子」と「体外遺伝子」を持っているが、日本人の集合体である日本国家においても、日本人の気質・性格・知能・体格などを規定する「体内遺伝子」と、上述の「体外遺伝子」を持っている。これが日本という国の「国として性格」を作っており、日本という国の「国としての行動」を取らせているのである。                                 (続く)