2011年12月24日土曜日

福島原発事故の検証 (20111224)

 日本テレビで『1000年後に残したい映像2011 原発が吹っ飛んだ! 怒号と絶望の総理官邸「撤退はあり得ない」 誰も知らない決断の裏 総理が語る緊迫の真実 実録ドラマ再現』という長いタイトルの放送があった。

 先ず、この映像は何を狙っているか? 男は「これは官邸の機密費が使われたな、日本テレビのある誰か官邸の息のかかった者に仲介させてこのような映像が作られたのだな」と思った。タイトルから明らかなのは、福島原発の燃料棒メルトダウン後のことが語られているということである。これを見た国民の多くは、「菅さん以下閣僚は一生懸命に精一杯努力したのだな、大変だったな」と、当時の政府の対処について理解を示すに違いない。それがこの番組制作の意図だろうと男は思った。

 問題は爆発事故発生以前の菅首相以下政府の対応である。この映像では福島原発の水素爆発に至る直前から後のことが語られているが、それ以前までのことが最も重要ではないのか?つまり初動対処である。初動対処が上手く行けば事故は未然に防げたはずである。この映像を見た国民は、日本人の国民性にもよるのだろうが、「菅さんは大変だったね」という同情はするだろうが、事故を未然に防ぐための冷徹な分析には深い関心を示さない。そこがこの番組の狙いであったと男は思う。

 国会に原発事故調査委員会が設置され、調査が行われているようであるが、調査に携わる方々は、「初動はどうあるべきだったか」という視点で、当事者のみならず原子力関係者は勿論のこと、識見のある自衛官や自衛官OB、アメリカやヨーロッパの原子力専門家などにも意見を求めるべきである。特に軍関係者や欧米人は普通の日本人とは別の見方・考え方ができると思う。彼らの知恵を借りるべきである。「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法」という法律が去る107日に法律第112号として制定されているが、これには上記のような視点での調査について何も触れていない。

この法律には事故の防止について提言をさせると書かれている。男は思考パターンが違う人たちの意見も聞いて立派な提言をまとめて欲しいと思う。原子力発電を所掌する行政組織のあり方や万一事故発生後の被害局限についての提言は勿論重要であるが、この法律の文言に「初動対処」の言葉が見えないのは気になる。これも日本人の国民性によるものかもしれない。困ったものである、これも今の日本が軍隊というものを保有していないため軍関係者の考え方が政府の意識に反映されないからだろう、と男は嘆いている。