2012年7月19日木曜日


原発公聴会は「市民」を標榜する反国家的組織に好都合である(20120719)

将来の原発の比率などをどうするか国民に意見を聞く聴取会が行われている。この公聴会において発言を希望する者は一般応募者のなかから無作為抽出で発言者を選ばれることになっている。ところが仙台や名古屋など行われた公聴会で東北電力の幹部や中部電力の社員が意見を述べたことから、「やらせではないか」といった批判の声が上がっている。

将来原発への依存度として、国が示した「0%」「15%」「2025%」の3つの案に対し、各三人づつ9人の代表が抽選で選ばれて、それぞれ意見を述べる仕組みであるが、依存度が高い方に賛成するグループに電力会社の社員が入っていて、しかも仙台では東北電力の幹部社員が電力会社の立場から発言したため公聴会場は一時騒然となった。

大江健三郎氏をリーダーとする原発反対運動の組織が、連日のようにデモ活動を行っている。そういう組織からも公聴会で「0%」に賛成する意見を表明する人を出していることは十分想像できる。一方で電力会社が「2025%」に賛成する意見を表明する人を出していることも明らかになった事実である。

今回公聴会では予め国が識者・専門家たちの意見を集約して、国民に対して上記三つの案を示した。そしてそれぞれの案に対して国民から広く意見を求めることにして公聴会が各地で行われている。そういう中で、「0%」に賛成する側が一般大衆で、「2025%」に賛成する側が電力会社であるという構図になってしまっている。これはちょっとおかしい。その一般大衆側の代表が大江健三郎氏をリーダーとする原発反対運動の組織の息がかかった人物であるかどうかはなかなか判断できないが、職業が電力会社社員など原子力に関わっている人物であるかどうかは容易に判断できる。

実はここに「市民」を標榜する組織が一般大衆に対して自分たちの考え方を広めようとする道具が提供されている一方で、原発の是非について一般大衆にはなかなか理解できないような考え方は伝わりにくいという問題が潜んでいる。この公聴会はツイッターなどを利用する「市民」組織にとって好都合である一方で、原発を残す必要性について一般大衆の理解を得るには非常に不十分な場である。

一般に「市民」を標榜する組織は国家観が乏しい。この組織は一般大衆受けする身近な暮らしのみに目を向けている。原発はモンスターのようなもので、その扱い方が難しいが、核兵器を持たない日本にとって「核兵器を持とうとすればいつでもできる」という実力を周辺国に見せつける道具でもある。もし、日本がドイツのように将来原発を完全廃止するというならば、日本はドイツのように先ずは憲法を改正し、軍隊を持たなければならない。