2012年7月23日月曜日


人の一生は宇宙から見れば一瞬にも満たない(日韓問題を考える手がかり)(20120723)

 わが太陽系は天の川銀河の端っこの方にある。その太陽系の中のわが地球から約3万光年の彼方にちりやガスに覆われた最大級の巨大星団が発見されたという。その質量は太陽の10万倍以上でブラックホールの母体の可能性があるという。天の川銀河の年齢は約129億年であるという。この我々の天の川銀河の近傍にアンドロメダ銀河があり、この銀河は秒速約122kmの速さでわれわれの天の川銀河に接近して、約約40億年後には衝突するという。衝突してもこの地球がアンドロメダ星雲中の星とぶっつかる可能性は低いらしい。しかし我々の地球は太陽の膨張によりあと数10 億年ほどで生物が住めなくなると言われているから天の川銀河とアンドロメダ銀河が衝突する前に人類は宇宙の何処かに移住しているだろう。


人の一生はそのような宇宙から見れば一瞬にも満たない。我々現生人類(ホモ・サピエンス)が誕生したのは約20万年前のことであり、誕生した場所はアフリカの大地溝帯である。人類の祖先は一人の母親又は一組の夫婦であり、そのホモサピエンスの親又はその親、または数代以前がまたホモサピエンスであったかもしれない。しかし最初の一人又は一組の夫婦の親はホモサピエンスでなかった。

ホモ・サピエンスは14万年前アフリカの大地溝帯を出ては瞬く間に地球上の各地に拡散した。世界中のホモ・サピエンスの共通の母は35人であると言われる。この日本列島にも北から西から南からやってきて、それが混血し日本の縄文人になった。日本人の祖先の母親は9人いたと言われる。

母親が9人もいた縄文人の遺伝子は非常に多様であった。ミトコンドリア遺伝子のタイプでM7aは日本列島のほか、朝鮮那部と沿海州に少し分布している。一方Y染色体遺伝子のD2型は朝鮮半島南部に散見されているほかは日本列島にしか存在していない。このD型はシナ(中国)大陸や朝鮮半島には存在せず、D1型・D3型がチベットやビルマに分布しているだけである。また、C1型は日本列島だけにしか存在していない。

2800年前から3000年前に、長江流域から海を渡り、あるいは黄海南部から朝鮮南半島南部を経由して九州にやってきた渡来系弥生人は、圧倒的多数の縄文人と混血し古墳時代の日本人となった。長江流域からやって来た人々は水稲・漁労の技術をもっていた。当時長江流域に黄河文明よりも1000年古い文明が花開いており、人々の形質の特徴は、面長・長身・のっぺり顔であった。(関連:201255日土曜日『発掘された人骨から復元した原日本人の顔立ち(20120505)』)

彼らはY染色体O亜型の集団であると言われている。この人々は約9000年前、華中・長江流域では水稲農耕を行っていた。2800年から3000年前、気候の寒冷化の影響で、華北から狩猟・畑作の民であった漢族が南下してきて、長江流域で水稲農耕を行っていたY染色体O3亜型の集団が住む地域に侵略してきた。漢族の圧迫を受けたY染色体O亜型の集団はシナ(中国)南部やその南の山岳地帯、今の雲南省や台湾などに追いやられた。

その中でY染色体O2bの集団の一部は、山東半島を経由して朝鮮半島南部から九州に、或いは長江流域から直接九州に家族単位で移動し、先住の縄文人と混血していった 弥生時代、九州や西日本に水稲農耕技術を伝えたのは、このO2b型集団であった。彼らが渡来系弥生人であり、先住の圧倒的多数の縄文人と混血した人々が、いわゆる「倭人」である。倭人は九州・西日本に住んでいたが、朝鮮南部にも住んでいた。

長江流域に北方から漢族がやってきて長江流域のO亜型集団の人びとを圧迫した。長江流域のO亜型集団の人びとは山岳地や雲南省などに逃れ、また渡来系弥生人のように直接海を渡り、或いは北上して山東半島から黄海をわたり朝鮮半島南部を経由して北九州までやってきた。朝鮮半島南部にやって来たY染色体遺伝子O2bの集団の一部は朝鮮半島南部に残った。そういう意味では朝鮮半島に住んでいる人々は、遺伝子の面で日本人と共通の部分がある。しかし朝鮮半島の人びとの遺伝子には殆どないミトコンドリア遺伝子M7aと、朝鮮半島の人びとには殆どないY染色体遺伝子D2及びC1が日本人にはある。

今、日本と韓国の間にはわだかまりが多い。勿論、シナ(中国)やロシアを意識した協調の気持ちもある。一部の「歴史が好きな」大物政治家などのように、或いは東大の歴史学者たちのように日韓同祖論を展開したい人々がいる一方で、従軍慰安婦像や日本海呼称や日本固有文化乗っ取りのことで気分を悪くしている人々も多い。天皇家の祖先は我々と同様、圧倒的多数の、しかし遺伝子が多様な縄文人と渡来系弥生人が混血して元々日本に住んでいた人びとであって、決して韓国人ではない。日韓同祖などあり得ない。日韓両国の将来のためにはならない不毛な話は、遺伝子の調査結果に基づく新たな知見をもとに無くしてしまわなければならぬ。

人類の営みの歴史が何万年とか何千年とか言っても、宇宙からみればほんの一瞬にも満たない時間の長さである。まして人の一生はさらに短い。ちっぽけな話でいがみ合うのは馬鹿らしいことである。