2012年10月11日木曜日


日韓関係の改善のために(52)「開化派勢力の分裂(続)(20121011)

 京都大学iPS細胞研究所長山中伸弥教授にノーベル生理学・医学賞が贈られることになった。山中博士はイギリスのジョン・ガードン博士と共同で銅賞を受賞する。ガードン博士はカエルの細胞の初期化に成功し、山中教授は2006年にマウスを使った実験で、わずか4種類の遺伝子を細胞に入れるだけの簡単な方法で、皮膚の細胞を受精卵に近い状態まで若返らせること(リプログラミング)に成功した。山中教授は翌年(2007年)には人間のiPS細胞の作製にも成功している。

 iPS細胞を使って既にマウスの精子と卵子が作製され、その卵子が使われてマウスの子や孫も誕生している。この原理は人間にも応用可能で、慶応大学の岡野栄之教授らの研究チームは人間のiPS細胞から人間の精子や卵子のもとになる「始原生殖細胞」みられる細胞を作製することに成功している。人間の身体は60兆個の細胞でできているが、例えば落ちていた自分の髪の毛から自分が知らないうちに自分の子供が誕生するというようなことが起きかねない。非常に厳重な倫理規定と罰則規定を定めた法律の制定が急務である。

 日本人が創造性に富んでいる一つの理由は、江戸時代まで日本国の中に66の国があったということが考えられる。この点はシナ(中国)や李氏朝鮮とは違い、近代以前のヨーロッパ諸国や州ごと独自の法律があるアメリカ合衆国に似ている。もう一つの理由は、日本には「作り手」と「使い手」の間に心が通い合う「ものづくり」の精神文化があるということである。日本で生まれた「茶の湯」も「おもてなし」の精神文化そのものである

NHKのBS放送の3時間番組で「にっぽん微笑みの国の物語」という番組があった。130年前、アメリカ人のエドワード・モースは日本が近代化の過程で失われつつあった伝統工芸品を非常に数多く蒐集してアメリカに持ち帰った。その蒐集品を通じて今の日本人は失われつつあった日本の「ものづくり」の精神文化をあらためて自覚する機会を得ている。山中教授がiPS細胞の作製に成功したのも、この「ものづくり」の精神文化とは無縁ではない。

「ものづくり」は、子は親に、弟子は師に、後輩は先輩に学ぶことによって行われる。「ものづくり」は富や名声を得ることを目的としない。その目的は良いもの、立派なもの、価値のあるものをつくることであり、その目的を達成するため努力する。辛抱する。失敗に失敗を重ねても成功するまで頑張る。心血を注いで素晴らしいものを作り出し、客に喜ばれ、人々に称賛されることに喜びを感じる。山中教授が学んだ中学校では後輩たちが山中教授を誇りに思い、山中教授のように失敗してもくじけず、辛抱強く頑張りたいたいと言っていた。再び呉 善花著『韓国併合への道 完全版』よりで引用する。

“こうして新たな閔氏政権内部では、二つの開化派グループの対立がしだいに深まっていった。先に紹介したロシア人は、この両派の対立を次のような観点で眺めている。
「朝鮮政府に政変(開国と近代化/筆者注)をもたらした栄誉は、私に言わせるなら、カトリックの宣教師らでも、また法外な利己主義により一貫して評判を落とし続けたアメリカならびにヨーロッパの山師らでもなくて、偏に自らの垂範で朝鮮人に目を開かせ、最善の生活を提示した日本に帰せられる。

 ともあれ、八〇年代の政変期には朝鮮国民が二方向へ分裂している。その一方は、祖国の安寧のために現行の孤立体勢を解体し、その事業で既に経験を積んでいる日本を手本とし、その指導の下に祖国へ改革を導入することを必須と見る。もう一方には、旧体制および中国との同盟を擁護する勢力がある。これら両勢力は自らの理想を成就するための権力闘争を、等しく精力的に緩みなく繰り広げている」(ゲ・デ・チャガイ編/井上紘一訳『朝鮮旅行記』東洋文庫/平凡社)”(続く)