2013年1月14日月曜日


こういうことはよくあることだと思う。産地直送リンゴの話。(20130114)

 ある友達からとても立派な美味しいリンゴを5、6個頂いた。形と言い、色艶といい、大きさと言い、申し分ない。男はこのリンゴを田舎の母がお世話になっているお医者さんや親戚などにお歳暮として贈りたいと思った。
 男が思っていることは、数は少なくても良いリンゴを贈りたい、ということであった。男の友達は男にリンゴの販売を仲介してくれた。この仲介のとき余程気を付けなければならないことがある。男が求める物の内容をその友達は知っているか、ということである。一箱あたりの金額だけ聞いたのでは、男の誠意は男が贈ろうとした相手先には決して伝わらないだろう。男が友達からそのリンゴの一箱あたりの重さと価格しか聞いていなかった。男はその一箱の中に詰められるリンゴの品質は、男がその友達から頂いた物と全く同じであると思い込んでいた。ところが実際に男の指定先に送り届けられたものは、いわゆる「わけあり品」であった。大きさも不揃いで、どれにもちょっとした傷がある物であった。しかし「わけあり品」ではあるが、美味しさは変わらないと思われる品物であった。

 男がそのリンゴを贈った先から礼状が届いた。男は自宅にもそのリンゴを一箱届けてもらおうと友達から聞いた販売先の農園にファックスを送った。それは年末の慌ただしいときに送ったため返事はなかった。年開けてその農園から電話があり男の女房が電話に出て「あのリンゴは大変美味しかったから私も自分の家で食べるため買いたい」と話した。リンゴの代金は直ぐ払い込んでいた。1日、2日してその農園からリンゴが送られてきた。その箱を開いてみて、見た目では男が友達から頂いたリンゴと変わらないように見えた。ただ大きさが不揃いであるのをいぶかった。年末、男の女房は田舎の叔母から「リンゴが10数個入っていたわよ」と聞いて変だなと感じていた。それは、男が友達から頂いたリンゴだとすれば、せいぜい7、8個こぐらいしか入っていない筈だと思っていたからである。その叔母は送られてきたリンゴがどれも傷物であったとは言わなかった。

 近所の方が用事で男の家に来た。その方は北海道のご出身で、男はその方から北海道の美味しい納豆を頂いたことがあった。男の女房はそのお返しにとリンゴを差し上げることにした。そのとき初めてそのリンゴが「わけあり品」であったことに気付いた。田舎で母がお世話になっているお医者さんや親戚に贈ったもとがそのような「わけあり品」であったことは残念なことであった。そのリンゴを販売している農園側からは、「来年もよろしくお願いします」と言われたが、もうそこからは買わないことにした。

 男も女房も山地直送で美味しい産物を手に入れたいという願望がある。しかし、良い品物は高島屋など一流のデパートで買う方が絶対安心である。そうでないかぎり、産地の農園との間で予めよい人間関係ができていることが絶対必要である。