2011年11月21日月曜日

渡部昇一『日本史』を読んで日本人はどうあるべきか考える(81) (20111121)

“徳川慶喜の大政奉還、および王政復古の大号令によって徳川時代は終わりを告げ、明治維新を迎える。この明治維新(いしん)を考える婆に重要な一点は、維新の元勲(げんくん)たちは、倒幕運動を革命ととらえていないのではないかということである。

 政権の中心になった人たちは思慮深く、もしあのとき慶喜が頑張っていたら危なかったとわかっていたようである。徳川幕府はフランスと親しく、フランスも幕府の援助を申し出ていたから、その気になればいくらでも援助を得ることができた。すると、勤皇軍にはイギリスが味方して、国を二分する内戦になる恐れもあったのである。

 そうなれば、どちらが勝ったにせよ代償としてイギリスかフランスに領土を割譲させられていたかもしれない。それが避けられたのは、ひとえに慶喜のおかげであるというようなことで、慶喜は後に侯爵(こうしゃく)になるのである。また、家を継いだ家達(いえさと)は貴族院議長になっている。

 そう考えると、やはり明治維新というものは革命というよりも大幅な政権交代と考えたほうがよいのかもしれない。こあたりがいかにも日本的なところで、簡単に革命とはいえないところがある。フランス革命では国王ルイ十六世も、「パンがなかったらお菓子を食べればいいじゃない」といったと伝えられる王妃マリー・アントワネットもギロチンにかけられている。ロシア革命では皇帝一族だけではなく、その馬まで殺されている。それに比べれば、日本の明治維新はいかにも穏やかである。

 これを英語では「リストレーション(restoration)という。まさに「王政復古」、主権者が再び王家に代わったことを意味する言葉である。日本では天皇家は滅ぼされたわけではなく、ずっと続いていた。だから、そこに再び主権が戻ったというのが「リストレーション」である。”(以上、渡部昇一『決定版 日本史』より引用)

 TPPで国論を二分するような激しい動きがある。TPPに参加することによって、日本はアメリカの属国になる、と極端な言い方をする人もいる。しかし、ここは明治維新の元勲たちのように思慮深く対処することが賢明である。

 明治維新後欧米を視察した岩倉使節団の一行や、その11年前咸臨丸では欧米した勝海舟や福沢諭吉は、それぞれ何を見て何を感じ取っただろうか。それは、日本は工業と商業を盛んにし、国を富ませ、強い軍事力を持たなければならないということであったに違いない。いわゆる「富国強兵」である。日本はそのようにしなければ西洋の植民地にされかねないという危機感があった。
 今の日本人は、TPPで利害得失のみに注意を向け、「富国」を目指しているが、「強兵」は不要だと考えている。これでは片手落ちである。「強兵」の意識が薄いから、日本はアメリカに敬意を払われず、中国などに甘く見られているのである。    (続く)

0 件のコメント: