2011年11月24日木曜日

渡部昇一『日本史』を読んで日本人はどうあるべきか考える(84) (20111124)

“使節団のメンバーのほとんどは維新の志士であったから、江戸と京都の間を歩いた経験がある。その道路がどんなものかを良く知っている。つまり舗装されていないから大八車(だいはちぐるま)も通れない。馬が、人間の足でなければ通れないのである。ところがアメリカへ行くと、すでに鉄道が走っているのである。また、ヨーロッパは、ナポレオン戦争が終わって五十年経っており、その間に彼らは休みもせず武装し、工業を高めてきた。その文明は圧倒的だったはずである。

 この差を埋めるにはどうすればよいのか、特にみんな武士であったから武器のことはよくわかる。ぼやぼやしていると、日本は西洋の植民地にされかねない。一刻も早く兵力を増強しなくてはならない。そのためには性能のすぐれた武器を持たなければいけないのだが、船一つ大砲一つ買うにしても造るにしても莫大な金がかかる。だからますます金を儲けなければいけない。その結果「富国強兵(ふこくきょうへい)」というスローガンを掲げるに至ったのである。この「富国強兵」ほど正確な当時の現状認識はなかったと思う。また、「富国強兵」を実現させるためには自前の産業を育成しなければならない。そこで生れたスローガンが「殖産興業(しょくさんこうぎょう)」であったのである。

 しかも、この一行が偉かったのは、我彼の格差に驚きながらも、自分たちは何年くらい遅れているのかと考えたところになる。歴史を振り返れば、信長、秀吉の頃はまだ対して遅れていない。大ざっぱに考えると、五十年くらい遅れているのではないかと判断するのである。そして、それなら追いつけると確信する。

 それで、日本に帰国したらとにかく富国強兵をやろうと意見が一致する。実は使節団の中でも大久保と木戸は一緒にいるのが嫌だからと別々に帰国しているほど仲が悪い。しかし、それでも富国強兵が必要だという見かただけは変わらなかったのである。”(以上、渡部昇一『決定版 日本史』より引用)

 日本のこれからの道は、「和魂洋才」と「富国強兵」しかない。世界は中国の台頭によって再び幕末のような状況になってきた。アメリカは日本を抑え込むため中国と手を結ぶという識者もいる。つまりは、弱肉強食の世界の再来である。どの国も「生き残る」ため必死に知恵を振り絞り、強い国に自国の安全を依存しようとする。東南アジア諸国が、もしアメリカや日本が頼りにならないと判断したら、これらの国々は中国に対抗して団結し、より強い「武力」を保持しようとするか、中国にぶら下る道を選ぶだろう。

中国は自分たちの核心的利益である日本の沖縄・南西諸島・尖閣を「奇襲」するかもしれない。アメリカ議会の諮問機関「米中経済安全保障見直し委員会」の年次報告書には「中国が奇襲攻撃で日本周辺を含む東シナ海での海洋権益を支配する、<地域支配戦略>がある」と書かれている。

 中国は4000年の歴史の中で、皇帝がモンゴル人のとき(元朝)も満州人のとき(清朝)も常に周辺諸国を支配下に置くという中華思想を持ち続け、今の、言わば「共産党王朝」のときもその国家思想は変わっていない。歴代中国王朝の柵封下にあり小中華思想を捨て切っていない韓国・北朝鮮は、再び中国の下に身を寄せる可能性はある。  (続く)

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