2012年3月26日月曜日


人間機械 (20120326)

 もう何か月も前から左大腿部に異常があった。左膝を屈伸したり左足を外に反らして伸ばしたりすると痛みを感じていた。整形外科の診断を受け、背面のMRI写真を撮ったが第3、第4腰椎に神経が当たっているように見えるが異常ないということであった。この痛みはどうかしたとき感じないことも多かった。痛みを堪えて敢えて痛む方向にゆっくりとストレッチ運動を繰り返すと筋肉疲労が蓄積するのか足の上げ下げのとき足が重く感じるが膝を屈伸しても痛まず、階段を駆け足で上がってもなんともないこともあった。

 女房は「お父さんは運動不足だわよ、椅子に長く座ったままパソコンばかりしているからだわ。私だったら大学病院に行って徹底的に調べてもらうわ」と言う。男は「自分の体の状況は分かっている、これは悪性の病気ではない、病院に行くのは時間の無駄だ」と思うがそのことは口に出さなかった。ストレッチ運動を行い筋肉疲労や神経痛に効くビタミン剤を服用すれば治ると思っていた。

 一昨日、男は女房と散歩がてらに大型複合ショッピングモールに買い物に出かけた。Mというディスカウントの薬屋の割引券が送られてきていたのでそれを持ってその薬屋に行った。道中歩くとき男は左足の上げ下げがぎこちなく見えないように努めて平然として歩いた。歩きながら男は女房に「割引券があるからポポンSを買っておこうと思う」と言ったら女房は「アリナミンEXいいらしいわよ、この間テレビでそう言っていた」と言う。ポポンSという総合ビタミンとただのビタミンBとは違うので男はそのことを女房に説明したが、女房は「アリナミンEXが良い」と言って譲らない。男はどうせビタミンC粉剤やコエンザイムQ10、葉酸、DHAなどのサプリメントも摂るので今回は女房の言うとおりにしよう思った。

件の薬屋で「アリナミンEXを下さい」と言ったら、薬剤師らしい60代ぐらいの男性従業員が別の薬を出して来て「これはアリナミンEXと全く同じ成分で、さらにニコチン酸アミドとパントテン酸カルシウムが配合されていて値段も安いです」という。男はそれを買った。

夕食時男は買ったビタミン剤を取り出した。女房はそれを見て「あらアリナミンEXが良いと言ったのに」と言う。女房と二人だけの食事をしながらの薬談義。「全く同じ成分だよ、しかも安い」「その薬剤師、きっとその薬を売るように言われているのだわ」「いや違うさ、あれは親切に教えてくれているのさ、薬をメーカーは医者を接待して薬を売り込むが、薬剤師にはそのようなことはしないだろう」「そんなことないわよ、薬屋にもメーカーは売って貰いたい薬のため接待をするはずよ」などなど。薬メーカーの接待はかなり大掛かりらしい。それが業界で自粛ムードとなり、あれはしない、これはしないと約束事を決めたことがテレビのニュースに流れていた。

 それを服用した翌朝、いつもの左大腿部の痛みは軽くなっていた。矢張り総合ビタミン剤よりこの筋肉痛・神経痛専門のビタミン剤は効き目が早いようである。人間の体も金属でできた機械のようなものである。動かさないでいると動かしたときどこかスムーズでないことがある。油を差したり、ねじを締めつけたりする必要がある。