2011年3月21日月曜日

問題を見つけ出す能力に欠けている(20110321a)

 今回の被災した福島第一原子力発電所から飛散した放能性物質による農作物・海産物・飲料水の汚染について、各都道府県におけるサンプル調査が行われその結果が発表された。厚生労働省は、その調査結果に基づき、農作物や海産物の出荷停止・出荷された物の回収を指示した。この度の処置は、正しかったか? 次の疑問がある。

    調査結果は食品衛生法に基づく暫定基準値を基にしたものである。その基準値は、今回の事故に遭遇し、国際的な基準値を慌てて採用したものである。

    その暫定基準値はあくまで暫定的な基準値である。それは日本人の日常の生活を勘案した摂取量を基に定められた実用的な‘安心の目安’ではない。

    調査の仕方について、具体的な、標準的な手順が事前に示されていたわけではない。検査結果のデータについては当然、大きなばらつきがある筈である。

    新聞やテレビに登場する学者たちの識見には、統一されたものがない。

    上記②の‘安心の目安’について、官房長官や一部の学者たちが説明しているが、全く不十分である。

 検査に従事した検査官たちは、「汚染されているか、いないか」という‘問題を解く’能力には非常にすぐれている。
 しかし、「測定の手順に問題があるのか、ないのか」という‘問題を見つけ出す’能力には欠けたところがある。
 厚生労働省の官僚も「基準に照らし、集荷を停止し、既に出荷した物を回収するという指示を出す」という、‘問題を解く’能力には非常にすぐれている。

 しかし、「その結果、どういうことが起きるのか。中央官庁としてそのような指示を直ちに出すことが、どういう基準によって正しいのか、他に踏むべき手順があるのではないのか」という問題を見つけ出す’能力に欠けたところがある。

 これは、これまでの学校教育、大学における教育の在り方に問題があったのだと思う。

 「問題を解く能力」ことも勿論重要であるが、「問題を見つけ出す能力」は更に重要である。問題は我々の周りにいくらでも転がっているのである。

 公務に従事する方々は、皆、一生懸命にやってくれているが、今一つ冷静になって頂いて、この未曾有の国難に対処して欲しいと願うばかりである。

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